踊る猫

女の都の踊る猫のレビュー・感想・評価

女の都(1980年製作の映画)
3.9
めくるめくフェリーニ・ワールドがここに。別の言い方をすれば、実にスットコドッコイな映画である。列車の中で遭遇した女性に迫るマルチェロ・マストロヤンニが、あれよあれよと女性たちが強権的に君臨するホテルに迷い込み、そこから逃避行を繰り広げるも……というスジ自体はデタラメな話。起承転結もなにもあったものではないストーリー展開にも関わらず、製作者が(フェリーニ自身が?)きちんと制作する過程で女性に「負けて」いるからこそ、こういうキツい「女性上位」の映画を撮れるのだろう。一見するとそれは男根主義を単に引っくり返した「だけ」のような――つまり、女性が上に立とうとマッチョイズム自体は相対化されていない――ようであり、しかし想像力は更にその斜め上を行き幼年期の性の目覚めや自身の内側の男性性/女性性に至るまで言及される。それが説教臭くならず、単純に半裸のエッチな女性たちの魅力によっても惹きつけるあたり、そのあまりにも幼稚な、『志村けんのバカ殿様』を彷彿とさせる「女性は脱がせてナンボ」な発想に呆れてしまうやらなんやら……もちろんこの映画はLGBTQの問題がアクチュアルな現在では古臭い。だが、ここで提示されたマッチョイズムの問題自体は今でも確認するに値する。
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