踊る猫

友だちのうちはどこ?の踊る猫のレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.3
映画を撮るのはいつだって大人である。子どもがカメラを回す、なんてことは考えにくい。なのに、アッバス・キアロスタミはどうしてこんなにも子どもたちの視座に寄り添えるのだろう。珍道中を描いたこの映画でも描かれるのは厳しいアイロニーを込めた大人たちの身勝手さ(ノートから千切られるページ!)、そしてその身勝手に翻弄されながら健気に諦めずノートを返そうとする主人公の誠実さだ。誰もが容易く言えることかなとも思うが、そうした子どもの主人公の姿に私たちのままならない宿命を投影して、この珍道中をそのまま人生になぞらえることもできる。しかし、そう読んでしまうことをどこかで躊躇う自分も居る。その躊躇いはそのまま、私がいつまでも子どものままで来続けたことの証なのかもしれない。考えてみればおかしなものだ。成人式や法律は年齢による大人の身分を保証するが、そうした決まりごと以外に私たちが大人であることを保証してくれるものなんてそんなに存在しないのだから。その意味ではこの映画に感動する私もまた子どもなのだろう。
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