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キャッチ22のHKのレビュー・感想・評価

キャッチ22(1970年製作の映画)
4.0
第二次大戦末期、イタリアの小島の米軍空軍基地が舞台のブラック・コメディです。
同時期に公開された朝鮮戦争の野戦病院が舞台の『マッシュ』とよく並び称せられますが、どちらも公開時は真っ只中だったベトナム戦争をシュールに風刺しています。
アルトマンの『マッシュ』は過去に何度か鑑賞。本作はこれまで観る機会がなくて初見ですが、私はどちらかというとこちらの方が好みでした。

本作はマイク・ニコルズ監督で『卒業』と『愛の狩人』の間の作品です。
主人公のヨッサリアン大尉は、無事に戻れる保証の無い日々の出撃が嫌になり自分は精神を病んでいると申告して出撃免除を願いますが、謎の軍規“キャッチ22”に阻まれます・・・

ヨッサリアン役はアラン・アーキン(当時36歳)ですが、他のキャストも今観ると超豪華。
食堂シーンではデビュー間もないマーティン・シーン、ジョン・ボイト、ボブ・バラバン、チャールズ・グローディン、アート・ガーファンクルらのパイロットが一緒に食事。
他にも従軍牧師のアンソニー・パーキンス、彼らの上官にあたる大佐役にマーティン・バルサム、中佐役は本作の脚本も兼ねるバック・ヘンリー、少佐役はリチャード・ベンジャミン。
さらにその上には将軍のオーソン・ウェルズ。その側近のオースティン・ペンドルトンに見覚えがあると思ったら『フロント・ページ』の脱獄囚でした。他にもまだまだ見た顔が。

敵との直接の戦闘シーンはほぼ無いものの、CGの無い時代に本物のB-25爆撃機が次々に飛び立つシーンや大量の火薬を使った基地爆撃シーンの本物の迫力が壮観。出演者たちにもかなり危険が及んだと思われ、当時の映画作りのパワーと情熱に脱帽です。

タイトルの“キャッチ22”とは軍規の第22条といった意味合いですが、その矛盾する内容から、原作が大ベストセラーとなった後は英語圏で“ジレンマ”“不条理”“落とし穴”などを意味するスラングとして定着してしまったそうです。

本作で初めて映画に出演した“サイモン&ガーファンクル”のアート・ガーファンクルですが、実はポール・サイモンの出演シーンもあったのにニコルズが全面カットしてしまい、これが後のS&G解散の直接の原因になったんだとか。

ところで本作は2019年にジョージ・クルーニー製作総指揮により全6話でTVドラマ化もされており、クルーニーは『ER』以来のTV出演だけでなく監督もしています。
かなり高評価だったようですが、現在、日本で観れるかどうかは不明です。
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