ろ

レミーのおいしいレストランのろのレビュー・感想・評価

5.0

職にあぶれ母を亡くしたばかりのリングイニ。
家族とはぐれ、たった一人パリに流れ着いたレミー。
二人が出会った3つ星レストラン”グストー”の厨房は、今日もお客からの注文が次々飛び交っていた。

残飯をあさるネズミとしての生活が、レミーは憂鬱だった。
そんな彼の唯一の楽しみは、料理人グストーの本を読みながら、彼の料理番組を見ること。グストーの料理哲学に触れるうち、いつかいろんな食材で料理をしてみたいと願うようになる。
厨房で出会ったリングイニの体を借りて、晴れて料理ができるようになったレミー。その腕前はまたたくまに評判となり、リングイニはレストランの看板シェフとして注目を浴びる。しかし夢が叶ってもめでたしめでたしとはならないのが現実。かつての仲間からエサをたかられ断ることができず、店の冷蔵庫から食料を盗み出す日々にレミーは罪悪感を抱く。
そんなある日、辛口で有名な料理評論家が店を訪ねる。
レミーと仲違いし彼を追い払ってしまったリングイニ。そしてネズミ捕りに捕まってしまったレミー。お客は今か今かと料理を待っている。さあどうする・・・?

ネズミが料理をしていた事実を知り、去っていくシェフたち、飛んでくる衛生局。
誰もいなくなった厨房のタイルの上で、レミーはがっくり肩を落とす。
そんなレミーにお父さんは、料理はできないがみんな家族だ、と群れ全員でコース料理に取りかかる。空腹のためではない、すべてはレミーの夢のために。

レミーがお兄ちゃんに「味わうことの素晴らしさ」を教えようとする場面が好きだ。
一気に口に放り込むんじゃなくて、ゆっくりかみしめてみて。香ばしさや苦み、甘みを感じるだろう?
だけどとにかく腹が満ちればすべてよしなお兄ちゃんには、レミーのように五感で味わうことの幸福を感じることができない。
自分たちとは異なる感覚を持つレミー。それでも家族はレミーの世界に飛び込んだ。
理解しようとするのも黙って寄り添うのも、レミーを想う勇気だった。

離れていく人もいれば、その味に感動し足しげく通ってくれるお客もいる。
夢のためにレミーのために、そしておいしい一皿のために固定観念を打ち破る勇気。
垣根をへだてて人間とネズミがレミーの料理に舌鼓を打つラストシーン。ひどく感動した。

「人間は毎日生きのびるだけじゃなくて発見や創造もする。たとえば”料理”。1個ずつだと思っていたものでも一緒に食べればまったく新しい味になる」
ろ