磔刑

シェルブールの雨傘の磔刑のレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
1.3
「雨降って地固まる」

今作を観て、恋愛主軸のストーリー、歌いっぱなしのミュージカル演出は嫌いだと自分の中でハッキリ認識できた。

ミュージカル映画そのものは嫌いじゃないし、むしろ好きなジャンルだ。しかし全編歌謡のみの表現だと演出に抑揚が出にくく、単調な印象を受ける。恋愛劇も、他の要素と絡めなければ主観的、刹那的な感情の連続にしか見えず、感情移入しにくい。それに男女が引っ付くか、そうでないかっていう猫も避けて通る痴情のもつれそのものに興味が湧かない。
幸せを自力で掴み取るのではなく、幸せの方から歩み寄ってくる展開もなんとも都合良く感じてしまう。(昔の映画だから許容できるが、こと邦画においては今だに同じレベル、もしくはより陳腐な内容なのだからヤバたんである)

話の大まかな流れは『ララランド』に多大な影響を与えているのは明らかだが、脚本の完成度、演出の成熟度(男女双方の視点)を見ても『ララランド』の方が圧倒的に上だろう。今作は恋愛劇のみで進行しているが、『ララランド』はそれにサクセスストーリーなどの多様な要素を絡めており、観点がより複雑だ。それに伴い、必要な恋愛要素を最小限に絞っているので『シェルブールの雨傘』ほど感情的な印象を受けにくく、よりストーリーが精密にコントロールされているような印象を受ける。

私的には客観的な視点を持ち、垢抜けた脚本、演出能力に長けた突然歌い、踊り出す『ララランド』の方が好みであるが、その原点を知るうえで鑑賞する意義はあるだろう。
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