馬井太郎

冒険者たちの馬井太郎のレビュー・感想・評価

冒険者たち(1967年製作の映画)
4.0
長崎県沖合の端島(通称:軍艦島)が、世界遺産登録に手を挙げたという。遠望すると、その名の通り、本当に軍艦のようにみえる。
同じような島がフランス、ラ・ロシェルの沖合に見える人工島「ボワイヤー要塞」である。1802年に着工したが、ナポレオンが失脚して中断され、その後、再工されて1860年に完成したといわれる。
映画が公開された1967年、巨人軍V3、吉田茂元首相逝去、さらに、建国記念日2月11日が制定されたなど、歴史を振り返れば、どんなものでも懐かしい。
パソコンも携帯も、何にもなかった。それでも、いまにして想えば、それなりに、いい時代だったなあ、と幸せをかみしめる。
就職して間もない頃、「冒険をしろ、失敗を恐れるな」など、とよく言われたものだ。この言葉に、はじめの頃は、奮い立たったが、歳とともにしなびていった。失敗すると、その果てに「左遷」が待っているのである。
でも、人間、生まれてきたからには、冒険を避けて通るな、と別な自分が叫んでいる。だから、この映画を観てほしい。
沈船から掘り当てた財宝を3人で分けたジョアンナ・シムカスの取り分を、彼女の故郷を訪ねあて届けるくだりが、いい。ジョアンナは、財宝を横取りしようとしたヤクザの流れ弾で息を引き取ったのである。

それから、月日が経った。
アラン・ドロンは、軍艦島を買い取ったというリノ・ヴァンチュラを訪れる。だが・・・中略・・・

死に瀕したアランに、リノは、言う。
「レティシア(ジョアンナ・シムカス)は、おまえと暮らすって、言ってたぞ」
マヌー(アラン・ドロン)は、答える。
「この嘘つきめ」・・・。

エンドロールは、軍艦島の上を舞い上がっていく。アラン・ドロンが、昇天していくように、やがて、豆粒ほどの大きさに。