ラウぺ

コマンダンテのラウぺのレビュー・感想・評価

コマンダンテ(2003年製作の映画)
3.9
キューバのフィデル・カストロ前議長死去とのニュースを聞き、オリバー・ストーンの「コマンダンテ」のDVDを発掘。
2002年の2月にまだ現役だった頃のカストロにインタビューしたドキュメンタリー。
DVDを買ったのは2010年前後ではないかと思いますが、記録を確認できず。

2015年までアメリカとは断交状態にあったキューバは、キューバ危機直後から殆ど準交戦状態といっていい状態が継続し、同時多発テロ後のブッシュ政権の時代とあってカストロとのインタビュー自体が奇跡的で貴重なものですが、小難しい政治の話よりも、カストロその人に焦点を当てたインタビューの内容が興味深かったりします。

執務中に着ている緑の軍服に足元のアップが映るとその靴にはナイキのロゴがあったり、「タイタニック」をビデオで観た、という。
「永遠に生きたいか?」との質問に「限りある時間という概念に私は慣れてしまっている」とのこと。

独裁者という立場については「わたしは自分自身の独裁者であり、国民の奴隷なのだ」という。
国内的に抑圧的な政策を行っているのでは?との質問には「国民を取り締まる警官は居ない」という。
全体的に和やかで、遠慮なく質問をぶつけているインタビューですが、直球で質問に答えるのではなく、微妙にはぐらかすことで直接的な返答を避けているところもあり、老獪な独裁者として一枚上手なところが垣間見られます。

他でも同様のことを何回も指摘をしていますが、この映画に出て来るカストロその人が全ての面を見せていると思うのは早急で、短絡的というものでしょう。
この映画がアメリカで公開されなかったのも、在米キューバ人の反対によるものとのこと。
オバマ政権時代のアメリカとの国交回復の際も、在米キューバ人はキューバの抑圧的政策を理由に反対していた点など、留意する必要があります。
しかし、執務室だけではなく、市中に出てカフェやレストランなど、さまざまなところでインタビューを受けるカストロの姿は希代のカリスマとしてというより好々爺なイメージで、非常に真摯で思索的な人物に見えました。

キューバ革命や、ゲバラ、フルシチョフやケネディなど、生の印象を語れる人物の死去は、「革命」という言葉にまだ一種の希望が見いだせた時代の最後のしっぽが途絶えた、という象徴的な出来事といえると思います。
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