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プロメテウスのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

プロメテウス(2012年製作の映画)
4.0

#プロメテウス
『エイリアン』(1979)の前日譚/起源的なSF大作で、リドスコ監督がシリーズに帰ってきた。

『最後の決闘裁判』公開タイミングで同監督作一気見マラソン中に観賞。
いろいろと意味不明な点やツッコミどころはあるが、映像と音響は今見てもかなり凄い。


■古代宇宙人説
プロメテウスとは、ギリシャ神話に登場する神の名前。人類に火を教え、文明発展のきっかけを与えた神である。

本作は、太古の地球に飛来し生命誕生のきっかけをもたらした宇宙人(通称:エンジニア)を求め、2089年の人類がプロメテウス号という宇宙船で彼らの星へ旅をする話。

ナスカの地上絵/ピラミッド/ストーンヘンジetc
当時の人類の仕業とはとても思えない古代文明の痕跡。これは宇宙人の仕事に違いない。

地球には古代に宇宙人が飛来し文明の手助けをしていたのだという、いわゆる「古代宇宙人説」が1970-80年代頃にとても流行していたらしい。
自分が子供の頃、SF好きの父親の本棚にもこの手のトンデモ本が何冊か置いてあった記憶があります。

リドリースコット監督も、この手の珍説が大好きなのか?
1億ドル以上の予算を投じ、伝統のエイリアンシリーズでこのトンデモ世界観を再現して見せたのが本作です。


■映像と音響がトンデモない!
本作はとにかく映像と音響が大迫力です。
今回、公開年ぶりにブルーレイで観たのですが、2021年の今見てもけっこうすごいと思える。

最初、夜寝る前に観始めたのですが、低音がやたら響くのでいったん休止して休日の昼に大音量で観ました。
7.1ch音源で、割と椅子が震える勢いを楽しんだ。


■ストーリーの意味がぜんぜんわからない!
本作は、たぶん初見だと何が起こっているのかぜんぜん意味がわからない気がします。

ところどころ『2001年宇宙の旅』(1968)を意識してるんだろうなって感じる。「デヴィッド」出てくるし。

内容のみならず、2回続けて観れば割と意味がわかるかな、的なところも似ている。今公開されてたらyoutuberとかの考察が捗る系の映画です。


とりあえず人が派手に食いちぎられればいいんだよ的な本シリーズで、こんな小難しく高尚風にする意味あったのかなという疑問はある。

映画好きには当たり前でも、同じ映画を2回以上観る人って世の中にはそんなにいないと思います。
だけども、本作を前情報なしで1回だけ観て理解できる人っていうのもそんなにいないと思う。

本作のFilmarksスコアが3.2とけっこう低めなのはそのへんに原因がある気がしなくもない。自分自身、公開年に1回だけ観て、なんかそのまま記憶から消え去ってしまった部分はある。

一般的にネタバレはダメ、っていうけれど、この手の映画は半分くらいネタバレ把握してから観るのもありなんじゃないかなとも思います。


<以下、ネタバレあり感想>





■エイリアン描写
・広い部屋に筒状のモノがずらっと並んでる絵が出た時点でキター!ってなる

・最初に2人組が襲われるシーンの安定の恐ろしさ。
 「俺たち別行動するから」の死亡フラグがあからさますぎて心の準備できるのは◎

・クライマックスでエンジニアを捕食する「息子」の触手が画面いっぱいにバーンて出るのは特大のサービスカットすぎる。エイリアン無双だけ観たいって人もここは大満足でしょう。

・ラストの彼は、もうちょっと画面暗めのほうが良かった気がするな


■ストーリー等について
劇中で明確に語られていないことが多すぎるので、たぶんそうなのかな、も含めてまとめ。

◆オープニング
まだ生命の存在しなかった太古地球で、1人の巨人がなんか黒い物体を飲んで肉体が崩壊。
彼のDNAが海に散布されて... →二重螺旋のDNA/分裂していく細胞の絵でタイトルクレジット

いやもう最初っからぜんぜん意味がわからないんですけど、彼がある種の「プロメテウス」なの?
自らの意思で、この星の生命が発展するきっかけを与えた神的な?

そもそも、ヒト型の生命体のDNAがぶわーって散布されたら最初っから地球にはヒト型の生物だけ誕生するのではっていうツッコミどころもあるので謎すぎる。

まあ細かいことは考えずに「なんか地球に生命誕生シター!」くらいで観た方がよさそう。とりあえず絵のスケール感は凄い。


◆父娘のシーン
続いて登場する父娘のビジョン。これは主人公ショウの記憶/夢をロボットのデヴィッドが盗み見てたってことが終盤の彼のセリフでわかるけれど、初見だとまったくもって意味不明すぎる。

普通この手の過去回想シーンって、大人になったその人物のシーンを直後に持ってくることが多いけども、本作は本人寝てるから理解するのが難しい。


◆酒を飲ませるシーン
なんで彼がそんな目にあわされなきゃいけなかったのか意味不明すぎる。あまりにもかわいそうすぎる。目からなんか出るシーン絶叫しちゃうわ
次作『エイリアン・コヴェナント』を観るとまあわかるんだけど、続編が公開されないと動機が意味不明なのってどうなのか。


◆目覚めた巨人
眠りから目覚めたエンジニアがいきなり首ひきちぎるのが謎すぎる。
そもそもデヴィッドが彼に何をしゃべったのか、最後までまったくわからないし。

単にアンドロイドが首だけになるアレをやりたかっただけなのかとしか思えない。

まあ普通に考えたら、人類がロボットを作るまでになったことに激昂したってことなのかな?
彼はこの作品世界では神的な存在であって、神話の神様って、人間が神の領域に立ち入るとすぐブチギレて絶滅画策するもんね。


■キャラクター

◆デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)
このシリーズは彼でもっている。
冒頭、お留守番生活中の彼のバスケ遊びや『アラビアのロレンス』観て演者の髪型真似してるシーンが最高に面白い。

アラビアのロレンスは、白人が他種族の土地に行ってそこで英雄になる話なので、デヴィッドは英雄になりたい男なんだな、ということがわかるようになっている。ここは次作への伏線的でもある。

人間に憧れる人造人間って、鉄腕アトム/ピノキオ的だよね。
ただ、次作と合わせて観ると一応話はわかるんだけど、本作だけだと全くそうは見えないだろ問題は大問題だと思います。


◆ショウ博士(エリザベス・ショウ)
一応の主人公。
「出産」シーンえぐすぎるけど本作イチの見所。閲覧注意すぎる
お腹がボコボコするのは自分でふくらませてるらしい。すげえ

演技が迫真すぎて、ヤクザのサラシ的ほぼ全裸みたいな恰好なのにエロイ気持ちになる観客はゼロだったと思われる。


◆ホロウェイ博士(ローガン・マーシャル=グリーン)
何も悪いことしてないのにマジでかわいそうすぎる。


◆ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)
割としょうもない役だった。スター女優の無駄遣い。乗船拒否で無慈悲に火炎放射で焼き殺すシーンだけは最高。

クライマックスでわざわざ尺とって1人だけ脱出したのに、ショウを襲うでもなくエイリアンに食われるでもなく宇宙船の下敷きになって即死亡するの意味不明すぎる。


◆船長(イドリス・エルバ)
彼の出るシーンだけ妙な安心感がある。良キャラだけど、彼の尺を増やすと作品の空気感が変わってしまいそうなのでこのくらいでちょうど良かった。

みんな未来的な衣服着ている世界観なのに、彼だけNYのヤンキーみたいなキャップかぶってるのは謎だった。特攻を秒で決断するのも謎。キャラ造形雑すぎない?


◆副長(ベネディクト・ウォン)
まさかドクターストレンジの相棒ウォンが出演していたとは。若すぎ/痩せすぎ/脇役顔すぎ


◆ファイフィールド(ショーン・ハリス)
M:Iシリーズのソロモンレーンが出演してたの今回初めて知った。M:Iとキャラが違いすぎる。
こいつがなんでびっくり人間みたいなバケモノになったのかホント謎すぎる。撃退シーンは笑ったけども。

◆ショウの父親(パトリック・ウィルソン)
アクアマンの弟オーシャンマスターがチョイ役で出ていたとは。

◆ウェイランド社長(ガイ・ピアース)
アイアンマン3のあいつ。特殊老けメイクがBTTF2の老ビフとなんか似てる気がした。

なんでわざわざ40代の彼を起用してヨボヨボの老人にしてんのか意味不明だったけど、元の脚本では若くて老化に焦る彼のシーンがあったらしい。カットしたら意味不明になると思わなかったのか


■その他
・このシリーズでオープニングに「DUNE enterteinment」ってクレジットが出るの感慨深い。
 「ホドロフスキーよ、見てるか...」ってなる。

・冷凍睡眠から目覚めた乗員が即嘔吐してるの面白すぎる。
 いきなりキャラクター大量に増えるから、ご丁寧に全員額に名札貼ってあるの吹く。

・「子犬たち」とかいう地図作成メーカーめちゃくちゃカッコイイ

・砂嵐が襲来するシーン、同監督の『オデッセイ』、シャーリーズセロン出演の『マッドマックスFR』を思い出した。

・プロメテウス号の船内の廊下、なんとなくミレニアムファルコン号っぽさある。

・役者の顔がやたらと見やすい宇宙服のヘルメット、撮影の都合があからさますぎて笑う。
 あんなに視界良好なのに「酸素きれいそう大丈夫!」ってすぐに脱いじゃうの頭悪すぎるなあ...ってのは笑うところなのか


【スコア】
★4.0で。

記憶の中ではもうちょっとしょっぱい映画なイメージがあったのですが、冷静に観てみると割と良かった。とにかくスケール感だけは満腹なくらいある。
チョイ役の俳優さんで、本作公開後の作品でちゃんと知った顔がけっこうたくさん出ていたのも◎

撮影秘話含め、シネフェックス日本版26号の記事がけっこうイイです。
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