マヒロ

明日に向って撃て!のマヒロのレビュー・感想・評価

明日に向って撃て!(1969年製作の映画)
3.5
強盗団のリーダーであるブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)と、その相棒サンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)の逃避行を描いた作品。

アメリカン・ニューシネマの流れが入ってきた頃の作品だからなのか、かなり挑戦的というか変な演出がなされているのが特徴的。
冒頭、オープニングクレジットと共に映し出される古ぼけた記録映像のような列車強盗のシーンから、セピア色を残したまま本編に突入する。そこでは恐らく強盗の算段を立てているであろうブッチが銀行の品定めをしている場面と、サンダンスが酒場で賭けカードをしている場面が描かれるんだけど、この一連のシークエンス、BGMは一切流れずセリフもかなり少なく、カメラも極端なクローズアップと陰影の濃い美しい映像で、西部劇とは思えないアート映画チックな雰囲気を醸し出していて、かなり格好良かった。というか、この映画の"格好良さ"のピークはここな気がする。

物語的にも、2人のアウトローが追われる身となるところから物語が転がり始めるんだけど、この追跡者というのがどんな人間かというのはセリフで語られるのみであって、遠方からジワジワと迫ってくる姿しか見えないので、終始得体の知れない存在でしかないというのが不気味。2人は常にこの存在に脅かされ続けるので、どこか頼りなく見えてくる。

また、中盤あたりでいくつかヒロインを含めた3人で行動するシーンをダイジェスト的に流すシーンがあるんだけど、これがまた妙に長い。
名曲『雨にぬれても』(この映画のための曲だとは知らなかった)が流れる自転車の場面は良いとして、延々とアメリカ旅行をしているところは果たして何を見ているんだろうという気になってくる。
この絶妙に抜けた感じの演出は、あくまでアウトローである2人を美化しないようにしているからなんだろうか。

最後の銃撃戦も、イカした撃ち合いとはいかず、ボロクソになりながら必死で抵抗するしかなくなってくるんだけど、そのヤケクソ感が逆に良かった。ここで思い出したのがペキンパーの『ワイルドバンチ』だったんだけど、後で調べていたら、そのワイルドバンチを実際に結成したのが今作に出てくるブッチで、ペキンパー版ではこの2人が抜けた後の事を描いている…という事実を見つけて、そんな因果関係があったとは知らずビックリした。同じ年に公開してるみたいだから偶然なのかな。実話を元にした映画は、こういう作品外での意外なつながりがあったりするから面白い。

(2019.63)
マヒロ

マヒロ