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悪名市場の東京キネマのレビュー・感想・評価

悪名市場(1963年製作の映画)
3.5
昭和38年公開のシリーズ6作目。 前作 『第三の悪名』 と同年の公開。 だからなのかも知れませんが、開巻からタッチが違う。 監督はまたまた森一生に代わってるぞ。 これはマンネリにしないための苦肉の策というよりも、実際テレコで監督しないと物理的な製作期間が足りなかったということなんでしょうが、それに応えられる監督たちも偉いです。

今回は何と贋物の浅吉(芦屋雁之助)と清次(小雁)が登場。 これが結構面白い。 後半で見せる雁之助の裸踊りが傑作。 周りの仕出しが笑いこらえられず腹を抱えていますよ。

今回のマドンナは嵯峨美智子。 存在感は流石だけれど、顔はパッツンパッツン、セリフも喋りにくそう。 顔をいじり過ぎだって~の。 もちょっと真面目にやってれば大女優になってたろうに、勿体無いです。 役所としてはパチンコ屋の経営者となっているので、当時の流行り歌が店内に流れている。 久保幸江の 『ヤットン節』、神楽坂はん子の 『こんな私じゃなかったに』 なんで、時代は昭和27年あたりだろうというのが分かる。 わたし、良い映画ってのは物語の年代が(クレジットなしに)ハッキリ分かるのが一つの条件だと信じているんで(だって年代が分らなきゃ、その時代の問題や葛藤が見えないもんねえ)、こういった演出は素直に感心するんですよ。 つまり、昭和38年の公開当時、メインターゲットである20代後半の人たちがハイティーンの頃の東京の風景を楽しむ設計なんですね、うまいねえ。

監督が森一生に代わったことで、オカマのお銀(茶川一郎)が復活。 何と贋の浅吉に挨拶にやってきて一悶着。居候をしていた本物とも再会し、いつ頃出会ったかなんて話をしていると、“お前が先に歩いていたんや、釜ヶ崎(カマが先)や” とオヤジギャグ。 相変わらずやり取りがおかしい。

エンドは、ハリウッド映画なみに大立ち回り。 6作目にしても全然パワーが落ちていない。 いいぞ、もっとやれ~、ということで益々のシリーズ継続感バッチリです。
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