このレビューはネタバレを含みます
池田屋事件の直前、近所の旅籠屋の大原屋一家と逗留する絵師滝川を巡るお話。「山中貞雄に捧ぐ」が悲しい。
簡潔かつ的確に描き出されていく大原屋の面々。笠碁みたいな親父に職人の彦太郎、滝川に惚れるお咲に松永といい感じのおつう。彼らの家族らしい距離感を描き出すさりげない演出が素晴らしい。
滝川や芳江や浪人、新撰組の面々によって描き出されるこの時勢は、やはら制作時の世間のことを考えずにおれない。当時の人はどう受け取ったのだろう?松永だけは青瓢箪過ぎてイマイチ。
祇園祭の様子をはじめ、カメラワークも美しく、何よりこの三条小橋界隈だけで全てを映し出す技量が凄い。そもそもどこまで野外撮影なんだろう?録音もしっかりしていました。
決して一枚岩にはしない人々細かい描写がとても美しく、歴史の一点を平然と通過していく市井の人々の強さが抜群の技量で描かれた名作でした。