しおえもんGoGo

オアシスのしおえもんGoGoのネタバレレビュー・内容・結末

オアシス(2002年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

色々感じすぎてちょっと考えがまとまらない。
とにかく自分の中の偏見をガッツリ思い知らされる気分。
障がい者と性についてここまで踏み込んだ作品はあっただろうか。

まず主人公の一人ジョンドゥは終始好きになれない。その衝動的な行動や責任感の無さ、ヘラヘラした顔、体の芯が通っていないような動き。イライラするというよりなんだか怖い。特に最初にコンジュを襲ったシーンは殴ってやりたくなる程腹が立ったし、コンジュと仲良くなってからも空気を読まずに家族の誕生祝に連れて行き、気まずい場にコンジュを晒す。果たしてコンジュは喜んでいるのだろうか。コンジュの表情やボディランゲージが読み取りにくいので、喜んでいるのか嫌がっているのか分からない。


もう一人の主人公コンジュはその演技も含めてすごかった。
口紅を塗りオシャレをし、隣室の夫婦の情事を聞きながら泣いているコンジュは人とのふれあいはもちろんだが、女として生きたい、愛されたいと願っている。健康であればこんなにも簡単で、周囲からも何とも思われないのに。障害がある状態から健康な状態へと入れ替わる演出は非常に鮮烈かつ切ない。
だから最初はレイプ未遂であっても、初めて自分を女として見てくれ、誰に恥じることなく連れまわし、面倒くさがることなく辛抱強く話を聞いてくれたジョンドゥが好きになったのだろう。
私がジョンドゥを嫌いになった性質や行動がまさにコンジュを救っている。社会に溶け込めないジョンドゥと障害のある孤独なコンジュ。はみ出してしまった者同士が惹かれ合う。いい話だ。

しかしこれで本当のいいのか?という気持ちも同時に沸き上がる。
結局私は自分が関わるつもりが無い遠い世界の二人がくっついてるのを見て、いい話だと思ってるだけじゃないのか。

障がい者も性愛はある。障がい者だって恋愛という意味で愛して欲しいし愛してくれる人は居る。
それをこういう形で見せつけられないと、私は理解できないし、多分今でも受け入れられていないのだ。


2人を取り巻く人々は冷たく見えるが、私がこの映画の中の人間なら間違いなく同じ反応をするだろう(特にジョンドゥの兄嫁には深く同情する)。
コンジュの兄夫婦も確かにコンジュを一人にして障がい者枠を利用しているが、かなりマメに顔を出している様子で、そこまで冷遇しているわけでもない。障害がある妹が男と寝ていたら当然真っ先に襲われたと思うだろう。まさか彼女をそういう意味で愛する人が居るなんて想像もしない。

緊張すると話せなくなるコンジュが警察でただ一言「恋人だ」と言えれば。必死に言葉を振り絞ろうともがく様は痛ましい程で、私も息を詰めてどうか少しでもいいからしゃべれますようにと祈っていた。

コンジュのために木を切るジョンドゥ。ラジオの音をあげて答えるコンジュ。周囲の誰にも分からないけれど、二人にだけはちゃんと通じるラストはほほえましく、でもやっぱり周囲に誰も伝わらない(あるいは耳を傾けない)のが切なかったし、その周囲に自分もいるのだろうと思う。

韓国映画の層の厚さを思い知った。
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