クリスマスになり、ある資産家の屋敷に集まったその家族と屋敷のメイドの8人の女達は、平和に休暇を過ごすはずが、突然主人が何者かに殺されたことから疑心暗鬼に陥っていく…というお話。
主人の妻と妹にその二人の母親、主人の娘二人に主人の妹と使用人とメイドで計8人。全員が容疑者となってしまったうえ、大雪で屋敷から出れなくなってしまいなりふり構っていられなくなった彼女らは、自分が抱えていた秘め事や他人の秘密を次々と暴露し、なんとか自分の容疑を他人になすりつけようとする。
事件に関係あるんだかないんだかすら分からないことまで芋づる式にどんどん明らかになっていき、変にコトが大きくなっていってしまうのが笑える。
驚いたのがこの映画、ミステリーでありながらミュージカルでもあって要所要所で歌とダンスが挟まれるんだけど、これがまた真面目にやってるのかふざけているのか分からない50点くらいの微妙なクオリティのもので、ひたすらシュールだった。ミュージカルってそうだと分かって見る分には気にならないが、知らないで突然登場人物が歌い踊りだすと脳の処理が追いつかない感じがある。最初の歌唱シーンは一瞬何が起きているのか本気で分からなかった…。
フランス映画らしいビビットでお洒落な色使いを始め、美術は素晴らしかった。ほぼ屋敷の中しか映らないシチュエーションが限定された映画ながら、キャラクターごとのマンガみたいな極端なイメージカラーや、絵本みたいにファンシーな屋敷の内装なんかが目に楽しくて、視覚的に飽きさせない。
このキャストの中ではカトリーヌ・ドヌーブとイザベル・ユペールしかパッと顔がわかる人がいなかったんだけど、いつものイメージと全然違うヒステリックに喚き散らすイザベル・ユペールがインパクト強かった。
先日見た『十二人の怒れる男』とは、同じ密室ミステリーでありながら何から何まで違う性質の映画になっていて、個人的にはそのギャップもまた面白かった。
(2019.65)