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子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつるのkoyamaxのレビュー・感想・評価

5.0
日本が誇るセックスアンドバイオレンスサーガのはじまり。。
闇を抱えた刺客、拝一刀と大五郎の冥府魔道を歩む軌跡。
エンタメカルト復讐映画の全六作の第一弾。


柳生一族により、一族を皆殺しにされた「元公儀介錯人」
拝一刀が、生き残った息子・大五郎と共に、
子連れの刺客として冥府魔道へ身を窶し、柳生一族の頭領、柳生烈堂への復讐を誓う。。

タイトルカットから炎と煙のオプチカル。その真ん中を歩いていく拝一刀。
並々ならぬ熱気を感じるオープニングです。


普くある「愛する者を殺され、闇を抱え復讐を誓うアンチヒーロー映画」の源流の一つといっていいんじゃないでしょうかね。

凄腕の刺客が子供連れて旅してるってどういうこと!?というところから入り、そのバックグラウンドを知るという流れで子連れ狼、拝一刀と大五郎の、その関係性を知ると共に、復讐への物語へと引き込まれます。

一作目なので、拝一刀が柳生烈堂に復讐を誓うまでのエピソードと、子連れ狼がどんなやつなのかそしてその凄さをシンプルに見せる導入編となります。
(宿敵の柳生列堂役が伊藤雄之助氏なんですが、この顔見せ1作きりでその後は大木実ら他の役者に代わってしまいます。そこは個人的には残念なところです)

拝一刀といえば、多くを語りすぎず、感情を窺い知ることが難しい顔つき、そして躊躇なく敵を一刀両断する問答無用の刺客。その為の手段が卑怯だとか、どうたらといちいち悩まない主人公の潔さがいいです。子供にも手伝わせるし、武士の魂である刀を投げて敵に刺すなど、手段を問わない問答無用感が良いかもしれません。

一方で自分が行く道を「冥府魔道」と称しながら、単なる卑怯で露悪的な行為に感じないのは、はなからまともな自分の死際など望んでいない、闇に生き、復讐を決意した人間の「覚悟」を感じるからでしょうか。一方では道連れにしてしまった子供にも絆と親心を感じる瞬間があり、その0.5%くらいしかないセンチメンタリズムの成分にもグッときます。
最強に強くクールではありますが、決してスマートすぎないところが拝一刀の魅力といえるとおもいます。

そういった原作が構成するキャラクターとテーマ的な面白さに加えて、映画表現の工夫が「映画」単体としての面白さにもつながっていると思います。

腕や首がふっとび血しぶきが飛び散るスプラッター描写。
大五郎の乳母車があんなことに。。。!
大五郎の虚無な目つき。
若山富三郎の見た目に反した機敏な殺陣。
背景がアニメの透過光のような真っ白になる、表現主義的演出。
悪党に囲まれ、湯煙に包まれた中でのセックスシーンなど、
(女性との絡みのシーンもシリーズの見せ場となって行きます。)等など。
その後のシリーズで展開される要素はすでにこの1作にあります。

完璧な映画とはいいませんが、基本的に現実にはありえない世界観が複合的に配されていて、単なる復讐ものの暗さを超え、様々な情感を堪能できるエンターテイメントに高められてところが凄いところです。
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