踊る猫

運動靴と赤い金魚の踊る猫のレビュー・感想・評価

運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)
4.1
キアロスタミももちろん優れた映画監督だが、この映画も侮れない。子どもたちを取り巻くのどかでヒューマンタッチなホームコメディ、と思わせておいてその影に大人たちの社会の歪さ(社会的地位や収入の不平等、等など)を射抜く視点を隠している秀作だと思ったのだった。映画的教養に乏しいので、この境地を持ちえている同時代的な監督は私は是枝裕和くらいしか思いつかない(そして是枝の映画がそうであるように、社会派的な視点から観ようとヒューマンタッチなホームコメディとして観ようと優れている、二枚腰の映画だと思った)。「大人は判ってくれない」とはトリュフォーのタイトルだが、この映画の子どもたちは大変だ。大人に言えない「靴を失くした」という悩みのために走らなくてはならなくなり、その隠し事を抱えて生きる身の上に家庭が貧乏であるという事情が否応なく伸し掛かってくる。そんな不平等を泣けて笑えるコメディにしたところに、イランの映画の成熟を感じる(いや、監督の資質がとりわけ「天然」として優れているのか?)。
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