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映画 けいおん!のshxtpieのレビュー・感想・評価

映画 けいおん!(2011年製作の映画)
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なつかしい……。

放課後ティータイムにはいくつか問題がある。まず、演奏がおっさんくさいこと。音だけを聞いていたら、手練れのおっさんたちが演奏しているようにしか聞こえない(住所不定無職みたいな演奏だったらどれだけよかったことか、と放映当時思っていた)。あと、妙に作曲が凝っていること(でも、シンプルなコードワークの曲が多いか)。とかなんとかそんなこと言いながら、「天使にふれたよ!」は涙なしには聞けません。

『けいおん!!』(二期です)は、山田尚子監督の最高傑作のひとつでしよう。その後、『たまこまーけっと』へと結実していく山田演出の機微が、この『映画けいおん!』でひとつの成熟を見ています。ただ、山田演出のすごさは、やっぱりTVアニメとしての連続シリーズにおける表現であったからこそのものであって、映画というメディアにうまくなじんでいないようにも感じる(その後、『たまこラブストーリー』で克服)。

それにしても……このロンドン旅行の意味のなさはすごい。確信的に、5人の変わらない日常を描いていくことで、他者を徹底的に拒絶し、自閉した甘いユートピアをつくりだしている。『けいおん!』シリーズの本質をむきだしにしているという点で、この映画は集大成かもしれない。

『けいおん!!』(二期)のすばらしかったところは、モブキャラの描きかただった。後半になるにつれて、モブキャラだったクラスメイトたちがモブキャラではなくなっていく。それぞれが固有のアイデンティティを主張する非モブキャラ、という他者の存在によって、放課後ティータイムという5人の閉じたサークルは、むりやりに「社会」へとこじあけられていった(そのあたりは、初期の『プリキュア』や『ハートキャッチプリキュア』に近い)。

しかしながら、『映画けいおん!』の5人は、ロンドンという異国の地に立つことで、またじぶんたちの輪の中に引きこもってしまっている(ホテルの外での食事のシーンがほとんどないこと、アフタヌーンティーができないことなど)。圧倒的な他者であるロンドンのひとびとは徹底的にモブキャラとして、背景として描かれ、彼女たちはそこでコミュニケーションを試みるわけではない。だからこそ、ロンドンの滞在中よりも帰国後の卒業式前後のエピソードのほうが輝きを放っている、真に迫っていることは、皮肉かもしれない。

あと、「いちばんいっぱい」はめちゃくちゃすばらしい曲だと思います。(0点)
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