踊る猫

オリーブの林をぬけての踊る猫のレビュー・感想・評価

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)
4.2
陳腐な言い回しになるのだが、真実と虚構の間の壁が溶けるような感覚を味わった。映画を撮ることに言及した映画である本作は『友だちのうちはどこ?』や『そして人生はつづく』にサラリと触れつつも、決して悪い意味でスピンオフとして(あるいは「副産物」として)成立した作品ではない。むしろこの映画を観てから『友だちのうちはどこ?』に戻ることでキアロスタミ監督がわざわざ映画を撮る理由、カメラを回し事物を記録する理由を読む楽しみが生まれるのではないかと思ったのだ。つまり、素朴な素人臭い映画監督のようでキアロスタミはかなり狡猾な人物とも言える。ややもするとこちらが感動ポルノを求めてしまうその心理をチクリと刺すような演出や台詞も盛り込まれており、「これはもしかすると、私たちの抱くオリエンタリズムを擬態することで逆に批判しているのか?」と唸らされてしまったことを告白しておきたい。まあそこまで深く読まなくても、木々の緑とロングショットの美しさだけでこの映画の成功は保証されたようなものではあるのだけれど。
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