キアロスタミ監督は生真面目なぐらいにメタフィクションとは何かを深掘りしている感じがする。
この映画は「そして人生は続く」の主演から生まれた派生作品である。
今回は劇中劇が重なり合う映画版で撮影中は夫婦役でありながら、実際は求婚中という皮肉のようでユーモアのある世界を描いていた。
イランは現在では結婚観には柔軟なところはあるとは思うが、当時は男側の母親などが相手女性を探して縁談を進めていく日本でいうところのお見合いだとは思うが、地域的にその風習が根強く残っている事が分かる。
しかし何回も撮り直しをしても、ワザと間違えて女性として我を通すあたりは強さを感じるし、男は何かに取り憑かれたように口説き倒すし見ていて怖くなってしまった。
最後の遠くまで引いたアングルで2人のこれからがどうなったかを観る側に想像させる方法は小津的な演出だとは思う。しかし今後の行く末は敢えて想像しないことがこの映画の良さなのかもしれない。
それにしても和やかな映画であった。私たちは中東圏におけるネガティブな印象を米国に洗脳されていたのかもしれない。