しんしん

「A」のしんしんのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
4.2
オウム真理教幹部による地下鉄サリン事件により、報道の目線がオウム信者に向けられたまさに渦中に信者、特にオウムの広報部長の荒木浩に森達也が密着したドキュメンタリー。

ドキュメンタリーの名作中の名作、死ぬまでに一度見るべし。

森達也監督の目線は鋭い。報道の押し付ける一面的な印象に甘んじ考えることを放棄した私のような愚かな人間に、その物事の構造と物事を一面的にしてしまう報道、それを信じ込み差別や偏見が普及してしまう人間の思考のメカニズムを一つの人々の目線から描き出す。森達也はその視点選びが抜群に優れた作家だと思う。

オウム信仰をする人は愚かで、犯罪予備軍だと考える方はこの作品を見ると価値観が根底から揺らいでいくだろう。

全ては信仰と宗教の話。共感できないから排除したり社会の価値観を押し付けたりする業の深さ。普遍的な差別や対立の話。