円柱野郎

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼けの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

フーテンの寅さんが巻き起こす騒動を描いた人情喜劇シリーズの第17弾。

お約束となっている冒頭の夢はサメとの戦い。
前年に「ジョーズ」がヒットしているので、そのパロディですね。
源公の下半身がちぎれているし、さくらも足を残して食われるし、意外に残酷描写?
まあそれも含めて笑いましたw

本作のメインは寅さんが飲み屋で拾った無銭飲食の老人(宇野重吉)との絡み。
夜半にとらやに連れ帰って泊めさせるのが寅さんの優しさだけど、とらやの面々が「ルンペンを拾ってきちゃったよ」と訝いみつつも泊めさせるのはすごいなあ。
まあ、その実は偉い絵の先生だったというのがミソですね。
老人の横柄な振る舞いは、老人自身がとらやを宿屋と勘違いしていたからだけど、行き違いのシチュエーション的にはコメディの王道かな。
正体に気づいてビックリして、「あいつに絵を書かせりゃ左うちわで暮らせる」と鼻息を荒くする寅さんの現金さにまた笑わせてもらう。

色々あって寅さんが旅先の龍野で老人の送迎車とばったり出会うのはご都合主義だけど、それを気にさせないのも「男はつらいよ」の様式美。
老人が龍野に来たのは「この女性に会うためだったのだろうなあ」と思わせる場面が静かで美しい。
かつて彼らの間であったことを思わせる会話がいい場面になってますね。

本作のマドンナはそんな龍野で寅さんが出会った芸者のぼたん(太地喜和子)だけど、話が半分過ぎてからの登場なので影が薄くなりそうなところを気っ風のいい感じのキャラクターで上手く掴んでいるように思う。
そういう意味では映画の前半は老人の話で、後半はぼたんの話と2部構成の風味になっている感じかな。
ぼたんの200万円という詐欺被害は昭和40年代の話だから、令和の感覚で言えば5~600万円くらいの感覚?
どうすることもできない寅さんが思いついたツテで老人に絵を描いてくれとお願いしに行くあたりは彼らしいとも思うし、老人が「画家が絵を描くということは、それは仕事だ」と断るのも心情がよく分かる。
あの場面の対立は心苦しくなっちゃうよね、どちらの気持ちもわかるので。

それでもラストは大団円。
良い人情喜劇の映画でした。
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