このレビューはネタバレを含みます
東京でトイレ清掃員として働いている男の日々を描いたヴィム・ヴェンダース監督の作品。
元々は渋谷の公共トイレを題材にした短編オムニバスが企画の始まりということで、それで主人公の職業がトイレ清掃員なのかな。
その時の企画の名残からか、渋谷の目新しくユニークなトイレが多数登場してます。
「トイレ清掃」という職業に対するイメージはどんなものだろうかと考える。
大変そう。
自分では進んでやらないかも？
でもその人達がいるから綺麗なトイレが使えるのだ。
この映画はそんなことを感じさせつつも、ことさら大仰には訴えてこない。
淡々と、主人公・平山の日常としてそれを描いていく。
平山を演じる役所広司は素晴らしい。
ある意味で達観している様でいて、しかし人としての喜びと哀しみを抱えているのが伝わってくる。
言葉ではなくそれを体現している感じはさすが。
平山にとっての「あたらしい朝」は素晴らしい一日の始まりだ。
仕事をこなしながら目に映る街の風景。
木々の木漏れ日。
仕事終わりに酒場で一杯、公共浴場でさっぱりし、休日にはスナックへ。
就寝前には枕元で読書。
それが繰り返されていく。
でも「同じ日というものはないのだ」というのがこの映画のテーマ。
大きな事件は起こらない。
些細な日常の出来事だけだけれども、しかしそれは日常にちょっとした変化を加えて去っていく。
「一期一会」という言葉があるけども、この映画では「木漏れ日」が「二度と同じことはない」ことの象徴として描かれる。
言葉にしては現れないけれど、毎日を積み重ねて描くことで、生きていることの意味を感じさせるような、そんな映画だった。
