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ミス・ポターのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ミス・ポター(2006年製作の映画)
3.4
ソニーが2018年に手がける「ピーターラビット」映画化作品には怒りと呆れ、そしてなおかつ誰もが思うであろうミス・ポターが墓で泣いているぞと一喝したくなるぐらいの酷い作品だと予告からして察してしまう。あれのどこがピーターラビットなのだろうか。イースターラビットの続編かと思うぐらい、設定も大改変した酷いパリピキャラに成り下がった改悪ぶりである。
ピーターラビットの作者ビアトリクス・ポターの生涯を描いたこの作品「ミス・ポター」は結構思い入れのある作品である。たぶん記憶が正しければ、小さい頃初めて夕方から夜の上映会に1人で観に行ったから。映画館を1人で夜行くことも割と周りには口うるさく言われる世代だった。基本、両親は快諾してたけど。アメリカ人のレニー・ゼルウィガーがイギリス人絵本作家を演じることは多少の違和感があったものの、この映画は史実とフィクションのバランスがいい。ゼルウィガーがゴールデングローブにノミネートされただけあり、前評判を覆す演技力と、産業革命時代のイギリスを描く美術の細かさは観ているだけでほっこりできる。ドラマパートはなんだか凄く平凡なのだけど、ポターがどんな人物なのかは十分伝わるので問題はないかと。
実はすごい過酷な時代を生きて、最愛の人との山あり谷あり生活、偏見と差別と戦った物語であり、「服をきたウサギの物語」がなぜベストセラーに登りつめたのか…その意味がよくわかる作品に仕上がっている。
総評として印象に残る台詞や場面がないものの、ゼルウィガーをはじめとするキャストの前評判を覆す演技とポターが生きた時代を感じ取れる「ミス・ポター」はイギリスでは児童文学が軽く見られていた時代・定説を打破し、いまこうして様々な児童文学が受け入れられている理由を知ることもできる。だからなおさら、今回のソニーが映画化するピーターラビットには怒りしかない。なんだアレ。
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