ぼのご

日本のいちばん長い日のぼのごのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
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ポツダム宣言から玉音放送に至る迄の戦争終結の舞台裏。ドキュメンタリータッチで淡々と語られるから、内容がより頭に入ってきた。役者もそうそうたる顔ぶれ。

閣僚会議の重苦しさ、終戦に納得出来ず反乱を起こそうとする若い将校たちの危うさ。どちらも張り詰めていた。それが一日の中に凝縮してあってタイトル通りの重み。
汗が顔や首から吹き出し、シャツを越え軍服や背広の肩から胸や背中にまで染み渡って、夏の蒸せ返る暑さが緊迫感に拍車をかけている。

仲介を頼んでいたのに逆に不可侵条約を破って侵攻したソ連、20万の人々を一瞬で消し飛ばす原爆を二発も落としたアメリカの外道っぷりもさることながら、差し迫った状況の中で当たり障りのない対応を選んでポツダム宣言を黙殺した日本政府及びに終戦を遅らせた軍部の無能っぷりにも唖然とする。緊急事態でもなあなあな対応を取るところや行き当たりばったりの無計画具合は、そのまま今に継承されてしまっていますね。

でもそこにいる一人ひとりの人格自体は決して悪いものではないのも印象的だった。特に鈴木総理や阿南陸軍大臣は、責任の重さを追及されながら同時に敬意をもって描かれている。
将校に銃で脅されても応じなかった放送局の人や、玉音盤を持っていると狙われる可能性があるため押し付け合いになっている中で名乗りを上げシッカリ隠し通した侍従、政府や軍の外に居る人の気骨も目立つ。良くも悪くも当時と今とでは人々の覚悟が違っていたんだろうな。

天皇陛下の御言葉は絶対の筈なのに、絶対じゃない。天皇の言葉を都合良く解釈する将校たちが恐ろしい。聖書にも解釈の違いがあったりするし、神格化されるってこういう側面があるのかなってちょっと思った。
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