ぼのご

子供の情景のぼのごのレビュー・感想・評価

子供の情景(2007年製作の映画)
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学校に通いたいけど、家にノートもえんぴつもない少女。父親がいる描写はないし、母親は少女に赤ちゃんの子守りを任せて働きに出ているし、経済的にこの女の子が学校に通うのは難しそうだった。

字を読めないのに読めるフリをしている場面は、可愛らしくもあると同時に切なかった。
卵を売ればノートとえんぴつが買えると仲良しの男の子に教えて貰って、文房具屋さんに持っていく。でも文房具屋さんでも卵を売っていたから断られ、行き先を変えて市場まで。

市場での大人たちの冷たさというか、余裕の無さが印象的だった。たぶん大人たちもそれぞれ事情があって苦労してきたからだろうけど、健気な子どもがキツく当られているのを見ると本当につらい…。
卵も半分割っちゃって、紆余曲折の末に苦労してなんとかノートだけは手に入れて、えんぴつはお母さんの口紅で代用。その流れがまた微笑ましさもあったけど、やっぱり切なかった。ただ学校に行きたいだけなのに。その為にノートとえんぴつが欲しいだけなのに。

学校に着いてからも教師に追い出されて、その後タリバンごっこをしている男の子たちに難癖つけられて、あんなに苦労して手に入れたノートをビリビリ破かれてしまう。観ていて泣けてきた。子どもたちのタリバンごっこの様子を通して、タリバンの行いの恐ろしさやくだらなさが伝わってくる。

この映画の舞台であるバーミヤーンは、アフガニスタン紛争でタリバンによって仏像を爆破されたことで有名らしい。昨年にタリバンが復権してからは、仏像の破壊を命じた人物がバーミヤーンの州知事になったって、トークショーでゲストの人が言っていて恐ろしくなった。ロシアのウクライナ侵攻もだけど、いつの世も悲しいこと恐ろしいことが多過ぎですね。

「自由になりたければ死ね」
タリバンごっこの犠牲になった仲良しの男の子が、主人公の女の子に向けて叫んだラストの助言が重く響いた。
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