ぼのご

THE BATMAN-ザ・バットマンーのぼのごのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

リアリティのあるダークな世界観、強いけど他のヒーローほど超人的過ぎない肉体、繊細でゆれる精神。バットマンは共感できる部分や身近に感じる要素が多くて、観ていて居心地が良かった。
ド派手なカーチェイスとか暗闇の中でのアクションも格好良かったし、僕の好きなニルヴァーナの曲が使われていたのも嬉しかった。

復讐に取り憑かれ、過去に囚われて行動しているバットマンは、志は正義と言えども危うい。悪役のリドラーや彼のフォロワーたちと紙一重の印象もあった。
でも決して人殺しはしなかったり、復讐だけではなく人々に手を差し伸べるようにも段々となっていって、成長への過程が素晴らしかった。
「心の傷は破滅へと向かわせる。身体の傷が癒えても消えない。けれどもし乗り越えることが出来たら、生まれ変われる」
そう言って、不安定さを持ち合わせながらも強く優しくなっていく姿に目が潤んだ。

リドラーは悲しかったな。彼が言っていたように、ブルースの行動や生い立ちはリドラーと重なる部分はあっても、家は裕福で気のおけない執事のアルフレッドが側に居たりと、環境自体は恵まれていた。幸福や不幸は人と比べるようなものではないけど、リドラーはブルース以上に辛酸をなめ続けて、努力を積み重ねても報われないまま歪んでしまったんだと思う。

ゴッサムで不正を働く人間を裁いて、仕舞いには本当に改革を行おうとしている人にまで狙いをつけて。本当はリドラーがバットマンみたいになれた未来もあった筈なのに。
カフェでリドラーが捕まった時「ケーキがまだ来ていない!」みたいなこと叫んでいた記憶あるけど、問答無用で警察に押さえつけられている彼の姿を見て、最後にケーキくらい食べさせてあげてよって思った。リドラーはケーキを食べれない環境を強いられてずっと生きてきたんだよね。許されないことはしているけど、同情してしまった。

「仮面をつけることによって自分らしくなれる」というリドラーの台詞。素顔では見せられない自分の一面が、必ずしも自分らしさであるとは限らないと思うけど、仮面があるから見せることの出来る面は確かにあると思う。
社会や常識に縛られて、自分を抑圧して生きている感覚は僕にも凄くあるし、そんな自分から別の何かになるためには、仮面だったりメイクだったり、あるいはピアスとか刺青とか、普段の日常の自分を覆う何かが必要になるのかなって、ちょっと思った。
ぼのご

ぼのご