ぼのご

自分の事ばかりで情けなくなるよのぼのごのレビュー・感想・評価

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群像劇でそれぞれ主人公が居たけど、大東さん演じるツダの狂い方と池松さん演じるリクオの怒り具合が鬼気迫っていて、特に印象に残った。
大東さんがアドリブで関係ない車の窓ガラスを割って、飛び散った破片で顔が血だらけになったってエピソード、笑えるし相当狂気的…!

明らかに風変わりなツダがリクオの前では萎縮してしまい、比較的一般よりの言動をとってリクオから「つまんねぇ」「普通」って言われ、リクオがその場を去ってから感情を爆発させる流れはイカれている上に情けないけど、その感情自体は理解できる部分があって切なかった。

「僕はあいつなんかよりおかしいんだ!」

って、それを好きな人の目の前で叫ぶ辺りも含めて本当におかしいけど、自分の意思とは関係なく普通でいられない人が「普通でつまんねぇ」って一方的に言われてしまったら、嫌な気持ちにはなると思う。ツダみたいな人はきっと、普通じゃないことによって嫌な思いをした経験も沢山あるだろうし。
ツダもリクオもリクオの彼女も、自分と重なるニオイをお互い嗅ぎ取った部分がある気がするけど、いわゆる普通じゃない部分が皆上手く噛み合わなくて、もっと悲惨な結果に繋がったのが悲しかった。彼女にとっては無駄ではなかったけど。

今から十年前に撮った初期の作品ということで、トークショーで監督自身が

「台本が良くない」
「台詞を役者に言わせてる感」
「回想の仕方のダサさ」
「拙いけどやりたいことがあるのはわかる感じ」

って言っていて、他人の自分が言うのは失礼だけど、実際観ていてそう感じる部分はちょっとあった。でも自分でそう言えちゃう松居監督の自己分析力が凄い。だからこそ、個人の繊細な内面を描いた今の作品たちがあるんだろうな。
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