ぼのご

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のぼのごのレビュー・感想・評価

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錚々たる面々の黒人アーティストたち。30万人の観客を動員した歴史的なフェスだったのに、黒人のイベントだからと陽の目に当たらず、これまで忘れ去られていたらしい。どれだけ黒人が軽んじられていたかということがわかる。

参加アーティストの歌声やメッセージ性が本当に素晴らしい。マヘリア・ジャクソンの圧巻の歌唱力、全身全霊で打ち震えるように歌い演奏しているスティービー・ワンダー、声からも歌詞からも芯の強さを感じるニーナ・シモン、どの人も本当に最高だった。
あとアーティストの名前を忘れてしまったんだけど、悲しみを沢山経験したからこそ創作することが出来たというような意味のことを歌っている人がいて、なんだか救われた。つらい経験もきっと無意味じゃないんだって、つらいだけでは終わらないんだって。そんな感じがした。

このフェスがあった同日に、アポロが月面着陸に成功したらしい。フェスの観客にそのことについてインタビューしている映像があって、観客は「その金で貧困が救えた」って答えていた。これは個人的に身に覚えのある考えで、自分も幼少期は周りに似たような境遇の人がいないくらい貧乏な生活していたから、同じようなこと思っていた。当たり前のように普通に暮らせていたらピンと来ないのかもしれないけど、貧しい中にいると割りと行き着く考えなのかもしれない。
でもまあ、宇宙が神秘的で綺麗なのもわかるし、それに勇気を貰える人達もいるだろうから、否定はしたくないけど。

素晴らしいフェスだけど背景には悲しみや苦しみがいっぱいあって、差別とか貧困とかは現代にも変わらずに残っているのがけっこうやるせない。それでもこうして皆で声を上げたり行動したりして、少しずつ良くなっていけたらいいなぁ。それで声を上げたり行動する必要もなくなって、のんびり好きに生きれる時代になったらいいなぁ笑
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