新潟の映画野郎らりほう

幸福(しあわせ)の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)
4.5
【脳内御花畑の勧め】


アニエス ヴァルダの「バカ映画」。

ドライで異様な妙趣漂う劇伴が鳴り響く中、ある家族が平原を進んでゆく。ズンズンと進むその“行軍”に、幾度も〃〈花〉のカットが挿し込まれる-まるで〈花畑〉を目指すかの様に-。


例えば「田園交響楽」(原作-ジット)。盲目の少女は開眼治療の果てにどうなったか。
例えば「マトリックス」(ウォシャウスキー)。あのまま夢を見続けていれば、その後の苦難/苦闘も識る事はなかっただろう。

極論だが、知的レベルが上がるにつれ幸福度は下がる。博学者は、凡人には気付かぬ様々な可能性選択肢が見える為に葛藤がより多く強いからだ。
対してバ○者はどうか。可能性選択肢は極めて少なく、世界はとても単純な為 悩む事無い、迷う事無い、疑う事無い。

自動車運転時、様々な可能性が見える者は『かもしれない運転』を行うが、可能性がまるで見えぬ者は『だろう運転』だ。
運転時緊張感が高いのは当然前者であり、リスクに対し盲目無知な後者は実にリラックス -幸福- したものである-周りの迷惑は別として-。

前置き長くなったが、つまり 『社会と他者の事など我関さずな、世界と自身を顧みる事すらせぬ無知盲目』であれば、悩みも 迷いも 焦りも無く『幸福』だとゆう事だ。

幸福だと思う者は、一度「己の御花畑」から出て(幻想的楽観を捨て 客観的視野を手にした上で)今一度他者の心情を顧見つめる必要がある-本当の幸福とは何なのか?と-。

それでも自己を顧みず他者配慮しないのであれば、脳内御花畑を進むが良い。


これはアニエス ヴァルダの〈聡明〉な「脳内御花畑映画」だ。




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