カツマ

アンノウンのカツマのレビュー・感想・評価

アンノウン(2011年製作の映画)
4.0
自らの人生が奪われる。妻も思い出も交友関係すらも剥ぎ取られ、何者でもない誰かになって彼は彷徨う。四方八方塞がれて、四面楚歌の絶体絶命。それでも人生を取り戻すための決死の激闘はとどまることを知らなかった。答えは必ずある。例えそれが期待していたものとは大きく異なっていたとしても。

いまや名コンビとしてお馴染み、ジャウム・コレット・セラ監督とリーアム・ニーソンが初めてタッグを組んだのが本作だ。その後二人のコンビは3本の作品を世に送り出し、リーアム・ニーソンはアクション映画の主演俳優として何回目かの春を迎え、セラ監督は更に出世し、大作『ジャングル・クルーズ』のメガホンを取るまでとなった。この二人のタッグ作品は基本的にハズレはない。ハラハラドキドキのサスペンスアクションが、周到に練られた脚本と共に躍動する!

〜あらすじ〜

アメリカの植物学者マーティン・ハリス博士は学会に出席するため、妻のリズと共にベルリンの空港に降り立った。だが、ホテルに着くやいなやマーティンは空港に大事な荷物を置き忘れてきてしまったことに気付く。そこで彼は妻にチェックインを任せ、空港へとタクシーを走らせた。
しかし、そのタクシーは空港に向かう途中に事故に遭い、マーティンは頭を強く打ち、四日間の昏睡状態の末に何とか一命を取り留める。記憶が定かではないマーティン。それでも妻に会いに行く一身で病院からホテルへと向かうも、そこには自分を装う別人と他人のふりをする妻がいた。何故自分の名を騙る男と妻が一緒にいるのか?マーティンは消された自分自身の痕跡を取り戻すため、事故に遭った際に一緒だったタクシー運転手に会いに行くことにするのだが・・。

〜見どころと感想〜

謎が謎を呼ぶ展開。何故、自分を名乗る人物が目の前にいるのか。何故、妻はその男と自然体で夫婦でいるのか。それとも狂っているのは自分の記憶なのか?それらがごちゃ混ぜになり、随所に激しいアクションシーンを盛り込みながら、息つく暇もないほどの軽やかなテンポで送るクライムサスペンスである。ただ、それらの謎はストーリーの進行と共に鮮やかな伏線となり、完璧な形で回収されることとなる。そのあたりの物語の旨さと展開力の巧みさは、ジャウム・コレット・セラという人の作品全てに共通する安定感でもある。

相変わらず大ベテランになっても激しいアクションを見せつけるリーアム。そして共演にはダイアン・クルーガー、ブルーノ・ガンツらドイツ界隈を出自とする俳優陣をキャスティングし、ベルリンが舞台であることに十二分な説得力を持たせている。

サスペンス映画ならば犯人がいるべき。そして謎にはサプライズがあるべき。そんな問いにしっかりとした回答を用意するのがこの監督の素晴らしさかと思う。ハラハラドキドキを感じるために、また映画のエンターテイメントとしての面白さを感じたいなら、この映画は正にその打って付けと言えるだろう。

〜あとがき〜

セラ監督とリーアムのコンビはやはり鉄板ですね。王道のクライムサスペンスなのですが、最後には納得のクライマックスを持ってきて、決して読後感も悪くない。バランス感覚とスピード感に長けていて、こちらを飽きさせない趣向が随所に凝らされている作品です。

セラ監督は今度はドゥエインとのタッグで続けて2作品を撮っているので、リーアムとのタッグはしばらくお預けかな?また彼らの黄金比をその目で拝みたいと思いますが果たして。
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