es [エス]のKaoruのレビュー・感想・評価

恐ろしい。何度観ても恐ろしい。

この実験が恐ろしいのではなくて、人は与えられたシチュエーション通りに順応してしまうといぅこと。なんの因縁もない全くの他人同士がこれほどまでに憎しみ合えること、ホントに恐ろしいと思うのです。

人間にはこんな部分が、例え1mmくらいだったとしても、潜在的にあるんだと思う。

役職をもらうことや、看板を背負うことは、自尊心を与える代償に、個を奪うといぅお話。

スタンフォード大学で行われた実験(ミルグラム実験)が題材になっておりますが、この作品はドイツ映画。
ドイツが作った、といぅところにすんごく意味があると思うのです。

ミルグラムは別名アイヒマン実験と呼ばれており、第二次世界大戦でユダヤ人を強制収容所に送った、アドルフアイヒマンから名付けられております。彼も、きっと個だったらユダヤ人となんて敵対しなかったと思う。役人としてただ命令を遂行したまで、と。(この辺はハンナアーレントを観るととてもよく分かります)

この映画の看守と囚人の役を、国家の規模でやってるのが戦争なワケでしょぅ。他人同士のくせに、空虚なもののために戦ってるなんてばかばかしいこと極まりない。

ナイフを掴まれハッと気付く看守。戦争してる民族も、こうやって気付く瞬間が来ることを祈らずにはいられないわ。