踊る猫

道の踊る猫のレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
4.1
毎度ながら頓珍漢なことを書くが、観ながら『じゃりン子チエ』を思い出した。マッチョなだけが取り柄のテツと、その横暴さに辟易しながらなんだかんだ言ってついていく(し、フォローもする)チエの姿が思い出されたのだ。むろん、テツとチエは親子でザンパノとジェルソミーナの関係は夫婦という見過ごせない違いはあるのだけれど……ジェルソミーナの表情が愛くるしくて、これだけでかなり点を稼いでいるといった感じ。作中で「アザミ顔のブス」と酷い言われようをしているが、なかなかどうして戸川純にも似た七変化が繰り広げられているように思う。全体的に(手ブレが生々しいからか)カメラワークの躍動感が印象深く、今ならもっと洗練された手つきで描かれるだろう素材がプリミティヴに、しかしだからこそ一層汗の匂いまで漂って来るようなものとして、迫力を備えて表現されていると思う。オチも見事。どういうオチかは割らないが、浜辺の場面はいつまでも切なく美しい。
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