せーじ

紅の豚のせーじのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
4.3
103本目は、そう言えばレビューしていなかったこの作品を。

要は「組織からドロップアウトした一人の男がグレて好き勝手やっていたら、あらぬ所からケンカをふっかけられて…」というお話。
そりゃ目の前であんな体験をしてしまったらそうなるのは当然。是非もない。

ただ「カッコいいのは、こういうことさ」というのは、どういうことさ?と、自分はリアルタイムで観た時からずっと引っかかっていて、実はそれは今も完全には解けてはいない。確かに彼は「カッコいい」し、彼が駆る飛空挺は「カッコいい」のだけれども、それまでの彼は結局のところ、自分が受けた傷と向き合わずに要領よくかわしていただけなんじゃないだろうか、と思ってしまう。カッコつけているだけで、実は全くカッコよくないように見えてしまっていたから、ずっと引っかかっていたのだろう。…リアルタイムで観た時には、それがうまく言語化出来なかったのだろうと今にしてみると思う。

終盤そんな彼が、そういう「カッコ良さ」を全力でかなぐり捨てて"守るべきもの"の為に戦うが、そこでやっと彼は女達に背中を押されながら「向き合う覚悟」をキメることが出来たのではないだろうか。
だからラスト、カーチスは彼にああ言うのだ。
もっともそれは、ようやくスタート地点に立つことが出来たと言うだけで、ここから先、彼を待ち受けている道程は恐ろしく険しいものであるということもまた、間違いないことなのだとも思うが。

最後に劇中にあるこの言葉を記して、感想にかえたいと思います。

「親方、戦争と賞金稼ぎってどう違うの?」
「ああ、そりゃあ戦争で稼ぐ奴は悪党さ。賞金稼ぎで稼げねぇ奴は能無しだ。」
せーじ

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