【虚空に消えたサランヘヨ】
…サランヘヨ… (愛しています)
闇夜の荒野を走るキャンピングカー(マイクロバス)に四方から謎の集団が襲い掛かる。バスは襲撃から逃れようと走るが、悪路にハマり止まってしまう。そして遂にバスの窓硝子が次々叩き割られる…。
TV洋画劇場で放映され 当時幼少期の私に忘れがたい印象を与えたのが上記場面である。
然し(幼過ぎた故か)憶えているのはその場面のみであり、前後内容や結末、出演者は疎か、作品タイトルすら解らないとゆう有り様だった。
『彼等はあの後どうなったのだろう……』 - 鮮烈な恐怖が 半ばトラウマの様にその後の私に憑き纏い続けた。
成長し映画ファンとなった私だが、幼少期に見た 名も知らぬその映画はずっと頭の片隅にあり、TV洋画劇場や レンタルする度に『あの作品にまた会えるのでは?』『もしかしてこれがあの作品では?』と、幼き日の恐怖は いつしか追い求め続ける対象へと変化していった -それはどこか憧れの女性への思慕にも似て-。
もう一度、あの作品に出会えたら、それは私にとって最高の恐怖を与えてくれる作品だろうし、最高の映画体験となる筈だ。
でも…。
数年ぶり、否 数十年ぶりに再開したあなたは 下品で稚拙で…、私が恋い焦がれたあなたは もう私の想い出の中にしかいなかった。
「サランヘヨ…」
幼い私の純な思慕は、闇夜の虚空に掻き消えていった…。
《DVD観賞》