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パンチドランク・ラブのBeSiのレビュー・感想・評価

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)
5.0
人生初、ポール・トーマス・アンダーソンの世界へ。映画を観なきゃいけないけど観る気力が起きない状況が続き、最近めっきりFilmarksを更新しなくなっていました。観たい映画もほとんど無いというマズイ状態にあった僕ですが、映画という趣味に再び没頭できる!!と自分を奮い立たせることが出来た。この映画のおかげで。以下、大絶賛レビュー。

強気な7人の姉とは対照的に内気な性格のバリーは、もがきながらも自身の事業に専念する生活を送っていた。しかしそんな彼でも、自分の傍に居てくれる存在が欲しい。人生初の恋の行方やいかに......。




✔異常なまでに共感できる主人公の像
常に内向的である主人公バリーの言動の数々が、まるで自分を観ているかのようで滅茶苦茶に共感した。人前では明るく元気に振舞っているけれど、うるさい場所や人で溢れ返っている場所は嫌いだし、身内の干渉にも強い抵抗感を覚えてしまう。バリーがパーティーへ行く際に最後の抵抗をしていたのには笑っちゃったけど、痛いほど彼の気持ちが分かる。恋愛面で言えば、重圧やストレスを抱えるのはもちろん、恋愛を楽しんでいる現状に満足するといったバリーの行動にも死ぬほど共感しました。他の問題が絡んでくると、もうウザくてしゃーない。片思いとか恋してると、一時はめちゃくちゃ楽しいけど後々はストレスでしかない。独り言体質も出るし。これが一番嫌ですね...。

✔アンガー・マネジメント
本作では、様々な形の "怒" が色濃く描かれていましたね。劣等感から誘発する怒りというのは、他人はおろか自分でも制御が難しいものだと思います。いざ恋人が出来ても、自分の愛する人を他人に悪く言われると腹が立つだろうし。自分の問題に身内あるいは他人が干渉してくることに対して生まれる怒りも、誰もが持っていることでしょう。これシンプルにウザイよね。バリーとディーンが電話を通じて口論する場面は素晴らしかったです。怒りに任せて相手を侮辱することに全く怖気づく様子が無いバリーに思わず困惑しちゃうディーンが最高に面白かった。映画において描かれた様々な電話の場面の中で、歴史に残るほど郡を抜く凄さだと思う。アダムとフィリップが最高にキレてたなぁ。数十分の出演時間ながら、フィリップは名優の貫禄を漂わせていましたね。本当に名残惜しい......🥲

✔狂気的な純愛
バリーとリナが熱くなり始めてから、抑えることが出来ない胸の高鳴り。もう可愛くて仕方がない。傍から見ればただの狂ったカップルですが、彼らだけが知る愛の形がそこには確かに存在しているわけで。本編は90分と短尺ではありますが、残り1時間は彼らの恋愛模様を存分に堪能することが出来るかと思います。ただただ可愛いです。ベッドシーンで独特な表現ででお互いに言い合うのエロい通り越してアホすぎて好き。

✔詩的な映像表現
①長回し
本編では多くのシーンで長回しが使用されていましたね。どれだけ登場人物たちがカオスで癖が強くとも、長回しをすることによって彼らの心情の核に迫ったリアリティ溢れる雰囲気が醸し出されていました。特に素晴らしいと思ったのは、主人公バリーがテレフォンセックスの申し込みをする場面。かなりの長回しでありながら、改めてバリーがどんな性格の持ち主であるかを繊細かつ詳細に描写しています。

②色彩
時折挟まれるカラフルな映像は、本作のタイトルと主人公バリーの心情を表現しているのではないかと考えました。

・punch-drunk love
=頭がクラクラするほどの愛

頭がクラクラするほどリナに恋をしているバリーは、目の前のことがグチャグチャにかき混ぜられた絵の具のように見えているのかもしれません。

③愛
彼女に会うためだけにこれといった荷物も持たずハワイに来たバリーを、人目を構うこと無く抱擁するリナのシルエットがあまりに美しくて言葉になりませんでした。このシーンをジャケットにしたのは紛れもなく正解だったと思いますね。一昔前の恋愛映画を彷彿とさせる素敵な演出でした。壁紙にします(エミリー・ワトソン綺麗......)。





人生初のPTA、最高の映画体験になりました。ベストムービー入り確定!!『パンチドランク・ラブ』は、今まさに恋をしている人、恋人がいる人に是非とも見てほしい一本。怒り、狂気、混沌、純愛がグチャグチャに混ざった映画です。90分という短尺ながら何回でも観たくなる、ポール・トーマス・アンダーソンの唯一無二の世界観を心ゆくまで堪能できる素晴らしい傑作。大好き。
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