BeSi

女王陛下のお気に入りのBeSiのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.8
『哀れなるものたち』に向けて、ヨルゴス・ランティモスの世界に足を踏み入れるための準備に向けて。『女王陛下のお気に入り』初鑑賞しました~。めっちゃくちゃ面白かった!!!!

戦争により不安定な状態が続く18世紀初頭のイングランド。気まぐれで病弱なアン女王に代わって宮廷の実権をを握る側近マールバラ公爵夫人サラと、したたかな若き侍女アビゲイルは、女王の寵愛をめぐり激しい火花を散らすこととなる。




✔芸術的な映像
ヨルゴス・ランティモスを知るうえで欠かせない要素である「映像美」。開始数秒で魅了され無意識のうちに没入していました...。魚眼レンズ或いは広角レンズを使用して撮影された映像が豪華絢爛なセットや衣装と合わさり、絵画のような世界観を堪能できます。本当に綺麗。クローズアップや定点、長回しのカメラワークがより一層美しさを際立たせますね。

✔涙ぐましい制作の裏側
本作の評価が高い理由として個人的に付け加えておきたいのがコレ。制作費を考慮し、撮影に使用する衣装やウィッグは場面ごとに作らず人数分の衣装だけを用意し、その都度洗って使用しています(衣装やウィッグを保管する専用のトレーラーハウスが作られたそう)。また、約2か月間の撮影期間で人工的な照明の設置は極力行われず、主要撮影地であるハートフォードシャーの変動しやすい天気を何度も確認したうえで見て撮影に臨んだそうです。スゴイ......。

✔権力争い、寵愛、醜態
本作の見どころである権力争いの描写、思いのほか露骨でビックリした。アン王女の懐をつかむために様々な行動に及ぶアビゲイルとサラの様子は、もはや「嫁VS姑」の構図を貴族に置き換え、嫉妬という言葉を具現化していました。まあ陰湿で惨めで危険だこと。お互いを蹴り落とすことだけ目標に一進一退の攻防を続ける彼女たちの姿が見ていて気持ち良い。しかし、2人の策略に簡単には堕ちない姿勢を見せるアン女王も見どころ。「脚を揉め」の言葉の本当の意味に気づいた時の感情よ...。

✔主要キャストの演技
オリヴィア、レイチェル、エマの演技に脱帽。権力のためなら手段を選ばない皮肉屋の貴族をユーモアたっぷりに演じられていました。3人の素晴らしい以外の何物でもない演技から感じた貫禄の大きさは計り知れません。一回見てほしい。もうホントに最高だから。




初めてのヨルゴス・ランティモスの世界、機知に富んだ非常に風刺的な一本。ユーモアに溢れた何とも高貴で気持ち悪い傑作でした。最高に面白かったです。もうたまらん。
BeSi

BeSi