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マグノリアのBeSiのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
4.9
続いて鑑賞したのは『マグノリア』。PTAの代表作ということもあり、期待値を高めていざ鑑賞。以下レビュー。


ロサンゼルスを舞台に、9人の男女の波乱の1日を群像劇のスタイルで描く。




✔豪華キャスト
とにかく豪華。トム・クルーズ、ジュリアン・ムーア、ジョン・C・ライリー、ウィリアム・H・メイシーなどは勿論、PTA作品の常連であるフィリップも出演しています。アルフレッド・モリナの電器屋店長はハマり役だったな。ソロモンとドニーが口論する場面かなり好き。皆が感情を剥き出しにして、迫力のある人間味溢れる演技をされていました。エイミー・マンの力強い歌と見事にマッチしていましたね。

あんなエネルギッシュで下品なトム初めて見た。でもやっぱりどんな役柄でもカッコイイ人はカッコイイ!!ゴールデングローブ賞助演男優賞受賞も納得の素晴らしい演技でした。

✔過去を背負って......
いずれも自分の過去に何かしらのトラウマや罪の意識を抱えながら生きている9人の男女は、何とかして今ある人生をより良くしようと様々な対象に癒しや居場所を求めます。しかし、変えられない過去は、いくら忘れようとしても付き纏います。俗に言われている "嫌な記憶はいつまでも鮮明に残り続ける現象" ですね。家族、恋人、仕事、どんな場合においても付き物だと思います。過去を背負って生きることの難しさや、それに伴う精神力の必要性を身に染みて感じました。どんな人間でも何かしらの過去を背負って生きているという点が、本作と大きく関連する "偶然" という言葉の重みを表している気がします。

✔蛙の雨
見事な初見殺し。下手なホラー映画よりもびっくりした。古代ギリシャ演劇に由来する "デウス・エクス・マキナ(=機械仕掛けの神)"。登場人物たちの末路を、何とか筋道立てたうえで少しでも良いものに変える方法です。この蛙の雨は、諦めかけていた人々に差し伸べられた救いの手そのものと言えますね。

✔ジムとクローディア
どんな犠牲を払ってでもこの2人は守るべき!!!と率直に思ってしまいました。初めて2人きりで食事するシーンが忘れられない。過去が原因で払拭されない不安や重圧のせいで、どんどんと会話に熱が入っていく2人の様子が見るに堪えなかった。お互いに居場所を見つけたことへの嬉しさも感じられたと思います。しかし、甘受や赦しといった側面で不安に駆られるのは、数十年も苦しい人生を生きてきた彼らにとっては何度も経験してきたこと。その苦悩を誰かに話すこともなく抱え続けてきたのであれば、彼らの負荷は計り知れないでしょう。本作において、ジムとクローディアは一番に守られるべきキャラクターであり、本作における唯一の救いだと思います。




ロサンゼルスに住む男女9人の波乱の1日を描いた『マグノリア』。まさしく、PTAの名が世に知れ渡るきっかけとなった作品。数々の映画賞を総ナメした、人々の内なる負の感情を色濃く描いた群像劇の傑作です。
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