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オッペンハイマーのBeSiのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
2週間遅れて遂に鑑賞!!アカデミー賞を席巻したこともあってロングランにはなりそう。以下レビューです~。

第二次世界大戦下において立ち上げられた「マンハッタン計画」に参加したJ・ロバート・オッペンハイマーは、優秀な科学者たちを率いて世界初となる原子爆弾の開発に成功する。時の人となったロバートだったが、この偉業は次第に彼を苦しめてゆく。世界の運命を握ったオッペンハイマーの栄光と没落を鮮烈に描き出す。



✔時系列
初鑑賞の際、多くの方が混乱されたことでしょう。簡潔にまとめますと、カラーの映像はロバートの視点(大学時代~原子爆弾の開発後)、モノクロの映像はストローズの視点(主に戦後)ということになります。2人の主要人物を対比させつつ、時間を操り鑑賞者をのめり込ませる手法を忘れないノーラン。ますます好きになっちゃいます。2回目以降の鑑賞でスムーズに物語が整理できるかと思います。

✔映像表現、音響
本作で主に描かれるのは主人公ロバートの心情表現。クローズアップや俯瞰など、様々な角度からロバートを映すことで、彼の成功者として自己に陶酔するといった人間的な一面、偉人として影で苦悩する理性的な一面が明確に区別化されています。

そして、ノーランの映画には欠かせない音響。これは映画館で体感するべきだと心から思います。しかし、これは「凄い」「迫力がある」で括るのは違うのかなとも思いますね。ロバートの視点に立ち、原爆の威力を追体験できる点が本作の魅力であると感じます。

✔成功者の在るべき姿とは
前述したあらすじ(公式サイトからゴッソリ取ってきただけですが)からも分かる通り、原子爆弾開発の先駆者として成功したロバートの苦悩を終始描写している本作ですが、もう少し深く考えてみると、彼の心情から人間の「複雑さ」が色濃く見えてくる気がする。これは本作のラストシーンに全て詰まっていると感じます。


アインシュタインと共に懸念した、世界の破壊を引き起こす核の連鎖反応の可能性。これについてロバートはアインシュタインに呟きます。

「その通りになった」

本作を鑑賞した多くの方が言い知れぬ鳥肌を覚えたことでしょう。世界の破壊者に生まれ変わったというロバートの言葉。ですが、この言葉の裏にこそ人間の感情の複雑さが存在しているのではないかと考えます。この言葉を口にした際のロバートの表情も考慮して推察してみます。この時のロバートが抱いた感情には、「後悔」が含まれていたのではないでしょうか。彼の曇った表情、原子爆弾が落ち炎に包まれ多くの尊い命が失われるという彼の想像からして......この推察は良い線いってるんじゃないか?!

これまでに生まれてきた偉人たちの中には、自身の偉業に対して疑問を抱いた者も少なくないと思いますし、ロバートもそのうちの一人でしょう。偉業を成し遂げた先にある国民からの英雄視は、当人にとって気持ちの良いものであることは間違いないと思います。しかし、誰かのため、何かのために身を捧げるという行動は、その人間を盲目にして制御を利かないようにしてしまう可能性もあるのではないか。ロバートはその可能性をも見越して決断を下したのかな。本作のラストシーン、人間の理性が働いてると言えば働いてるけど、名誉や地位への欲望が勝ったことを後悔したのかもしれないと考えると非常に複雑。なんとも恐ろしく後味の悪い終わり方でした。改めて考えると鳥肌立つ。モヤモヤしたな〜🥲

✔キリアン・マーフィ
本作で主演を務めたキリアンの演技......素晴らしい以外の何物でもありませんでした。観ているうちに実際のモデルと表情や仕草が似てきて、もはや本人を投影していると言っても過言ではない。人間の複雑性をキャラクターに取り込みつつ完璧に演じられていました。苦節20年、遂に世界的に絶賛される名優へ。本当におめでとう~!!😭😭😭もうひとりのお方は、敢えて言及しないでおきます......🗣




クリストファー・ノーランの名を知らしめる転機となった一本。善悪という単純な構造では決して成立しない人間の複雑性そして本質を鮮明に描いた素晴らしい作品だったと思います。永続的な苦悩に翻弄される科学者を映し出した、人類に問いかける大傑作。絶対に観るべき。


ノーランもおめでとう〜!!!受賞スピーチ聞いた時こっちもめっちゃ嬉しくなった!!!😭😭😭
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