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精神のkuuのレビュー・感想・評価

精神(2008年製作の映画)
3.0
『精神』
製作年 2008年。
日本初公開 2009年6月13日。
上映時間 135分。
前作『選挙』が世界的に高く評価された想田和弘監督が、これまでタブー視されてきた精神病に挑んだドキュメンタリー。
岡山市内の精神科診療所に集う人々の精神世界を通して、現代に生きる日本人の精神のありようを探ると同時に、精神科医療を取り巻く課題も浮き彫りにする。
前作に続きナレーションや説明テロップを排した独特の映像スタイルで、モザイクなしに素顔で出演してくれる患者のみにカメラを向け、被写体を一人の人間として鮮烈に描き出している。

外来の精神科診療所『こらーる岡山』には、年齢も性別も症状もさまざまな人々が通ってくる。
自殺未遂を繰り返す人もいれば、何十年も病気と付き合い自らの哲学や信仰、芸術を深めていく人もいる。
さまざまな心の問題を抱えた人々の精神世界を照らし出しながら、現代に生きる日本人の精神のありようを克明に描き出していく。。。

神経症、鬱病、PTSD、そして統合失調症やらの多種な精神疾患を持つ者への診察しとる情景や、院内での実情てのを観察記録と称して患者の姿にモザイクもかけずに撮りあげた、将に記録映像たるドキュメンタリー映画。
明け透けな内容は、監督自身が主張しとる
『健常者と精神病者との間のカーテンを取り払う』
ちゅう信条の意義は果たしとると思う。
せや、日本人にとって精神病院を、心療内科、はたまた心の病院なんて言葉を変えてても、そこに通う人が知人なら、現代日本まだまだ、心療内科を通う知人を、他の病気で病院に通う知人と同じ様に扱うことはない社会。
その実状において、実際このドキュメンタリーが海外の第13回釜山国際映画祭の最優秀ドキュメンタリー賞(PIFF Mecenat Award)等々を受賞してるにもかかわらず、日本の威厳あるドキュメンタリー賞を受賞していないのも、先に書いた事の左証の1つと云える。
せやから、まだ日本においては(リベラルも確かに増えてるとは云え)実情のそれ以上に、結局は精神疾患を持つ人たちを一種独特ととらえドキュメント材料として扱ってしもてるように感じた。
もっと書くならば、精神疾患を持つ者に対して偏見をも増幅させてしまう可能性も無きにしも非らず作品になりかけてる。
ドキュメントの持つ陰の部分のデメリット(メリットがあるものは必ずデメリットはある)功罪たるや、十分に現代の日本人の関心を集めよるモンはあるものの、小生が無知故か監督自身の真の論意が何なんか、曖昧模糊に感じた。
ただ単に物好きの監督が特異性のある世界を覗いて観客にも観てくれっ!!って、しょうもない好奇心小ネタを披露して自己満のご満悦なんかってすら感じるのは否めない。
疑って見れば、人は色眼鏡ちゅう認知の元に生きる生き物やし、色眼鏡越しに観てまう。
小生もその呪縛けらは逃れられへんし嫌味と取れる文章書いてもてるんですが。
せやけど、映像の中で患者が監督に対して
『この映画の意図は何なんですか?』
と疑問を投げ掛けてた。
『観察』ドキュメンタリー映画と考えてる監督。
不必要な語りや恣意性を除いて、ただ、精神疾患者ちゅうとこをクローズアップしてカメラを回しとるんやろけど、それが当の精神疾患をもつ者(内閣府の令和2年版障害者白書では精神障害者419万3千人。今はコロナ禍でもっと増えてる事は考えられる)たちにプラスになっとるとは云いがたいかなぁと。
視聴しとる者が、精神疾患を他の病気と同じ様に扱う社会で生きて、精神疾患に対して十分な知識を持っとる人ばかりなら、この撮影スタイルで異議は申し立てんかなぁ。
せやけど、
『健常者と精神病者との間のカーテンを取り払うのが目的』
ちゅうことをスローガンにしとる以上、精神疾患について啓発する様なナレーションとかを入れるのも有りやったんちゃうかなぁ。
そうしてたら、視聴者が、精神疾患に対してズブの素人やったとしても、誤った偏見をオーバードライブ見たいに増進させることなく、ホンマに平和に、安全にこの作品を安心して観ることができたんちゃうかと思う。
『単刀直入見たままを映像で映し出す』
ちゅうことは、その作り手の意図が大きく作用するはずやし、また、違う素材に関してならばエエようになったんやろけど、この『精神疾患』を扱うにおいては、ほんまにデンジャーで地雷を撒いとるスタイル感を拭えへん。
YouTubeとかではヤラセドキュメンタリーが跋扈してるし幾分かは知らんかった事とかも知識として得れた一面も多々あるのは事実ですが。 
余談ながら、最近はYouTubeで見るドキュメンタリーで、これは信憑性高い、こちらは低いと答えも出ない心理ゲームに嵌まってます。
話しを戻し、今作品を全否定のマイナスドキュメンタリーやとも云いきれない。
世の中に対立する物事には、決して答えはないと思う。
完全実在の話はまたの機会に書くとして。
肯定的から否定的に振り子のように動いて人は成長していくんやし、今作品をメリットあるドキュメンタリーと捉える人を否定はしてません。
ただ、マイナスな面とリスクを伴っとるこのドキュメンタリー問うべきものは多いと感じた問題作なんやろな。
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