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P.S. アイラヴユーのNMのレビュー・感想・評価

P.S. アイラヴユー(2007年製作の映画)
2.1
喧嘩も激しいが深く愛し合っている若い夫婦。

だがそれは昔の話。夫ジェリーは病死、残された妻ホリーはいまだに一日中彼を思い、一向に前に進めない。
子どもを作る作らないで揉めたことも深くのしかかってくる。

彼女が30歳を迎えた日、亡き夫から次々とサプライズが届く。
愛してる、という追伸のある手紙とともに……。


設定もストーリーも単純でなかなか心を掴まれなかった。サプライズの目的もずっと明かされないので根気が要る。こんだけ引っ張ったらさぞすごいオチなんでしょうねとハードルが上がってしまった。
だが手紙自体にオチがあるというより、本当に彼女が動き出すきっかけを与えるだけという感じ。膝を抱えていないで僕の言う通り行動してごらんという、それ自体が目的。その通り彼女は変わっていく。

彼女が立ち直れないだろうことを見抜き、死んだ直後ではなく暫く後からサプライズが始まることが、彼が彼女を知り尽くし愛していたのだと思わせる。

彼女も、長年夫の思い出を引きずっていることや、色々こじらせていることを自覚している。それも悲しい。
でも彼女は昔からこういう性格ではなかった。だったらこんな彼に恋していない。

色々と女子向けな設定。
旅先で運命の人に出会う。なぜか私の魅力に一目惚れ。今まで軽薄だったけど今後は私だけ。大勢の前で情熱的に告白される。悲しい時期もあったけど彼は私を愛していたことが本当に分かったからもう大丈夫。そして私にはファッションの才能があり、好きな仕事をして生きていける。親友を妬んで大事な時期に無視し続けたけど謝ったらすぐ許してくれる。自分に恋する男をずたずたに傷つけたが許してくれ、友達にもなってくれる。希望にあふれたラスト。
もちろんこういう映画もあっていいしたまには観るべき。

死別がテーマだが、彼の死がどのようなものだったかは一切描かれない。メインは残されたほう。彼女のほうがまるで死んだように生きていた。
死別し、かつ別の人と幸せになるわけでもないというのはやや珍しい作品。もっとも予感こそラストにあるが。
いずれにせよ、観終わったあと悲しくなく晴れ晴れしい気持ちになれる。

ずっと良い印象のなかった母親とついに共感し合うシーンはとても良い。この二人に距離があったことが不思議なくらい。
母にとって辛かったのは夫が去ったことより、娘が自分のように孤独になっているのを止められないことだった。それは辛い。親は誰しも、自分の失敗を子どもには決してさせまいとして奮闘するもの。

母の最近の行動さえ彼の計画の一部。彼は彼女だけでなくその母まで救ったらしい。ずっと怒っていた人が楽しくて笑う顔のパワーといったら。

「独りぼっちはあなただけじゃない」というありふれた言葉がなぜか印象に残った。あなただけじゃないなら独りではないのでは?と。私もいつの間にかこの映画に影響されてしまったのかもしれない。

メモ
『Galway Girl』………二人が出会ったときにライブハウスで歌われていたアイルランドのカントリーソング。by Steve Earle。手紙の中でも「僕のゴールウェイガールへ」と呼ばれている。まるで歌詞の通りのような出会い方をしている。
曲名だけで検索するとエド・シーランの別曲がヒットしてしまうので、「Galway Girl (From "P.S. I Love You")」または「Steve Earle」を付けて探すと作品内の動画や楽曲(itunes)が見つけやすい。

ウィリアム・ブレイク………イギリスの詩人、画家、銅版画家。様々な作家に影響を与えている。
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