Kaoru

イタリア的、恋愛マニュアルのKaoruのレビュー・感想・評価

4.1
幸せだけが恋愛じゃなくてよ。
オムニバスで綴られる、オトコとオンナの悲喜劇 from Italy。

まず言わせて。上から言うつもりはないのよ。ただね、イタリア映画ってのは、愛の告白でも喧嘩でもとにかく会話のやりとりを楽しむ文化があって、それが字幕や吹き替えだとどうしても伝わらないの。言葉が分かるとなお楽しいのだけれど、分からなくてもそれを踏まえた前提で観て頂戴。

ありがちだけれど、オムニバスそれぞれの登場人物が他の話にひょっこり出たりもしていて、みんな愛しい人々ばかりなのです。ヒューグラントなんかが出ている洗練されたラブコメより3の線を行く感じがイタリア的で面白いわ。

ずっと昔から、美しい愛の格言はたっくさんあるけれど、この作品には、それよりももっと現代的で、そして胸が痛くなるほどリアルな愛の格言がちりばめられてるのであります。

「幸せのちから」の監督ガブリエレムッチーノの弟シルビオムッチーノが主役の1話目『めぐり逢って』は、まさに恋に落ちる瞬間を描き、これがまた痛いヤツで…。この痛さそのものが見どころで、でもそれこそ愛の証だったりもしてキュンとする。
1番辛く苦しい話を描いた2話目『すれ違って』は倦怠期を迎えた夫婦の話。このいただけない旦那はイライラさせるだけでなく、たまにものすんごい大切なことを言う。「夫婦の危機を乗り越えるための子作りなんて犯罪だ」そうそう、ホントそれ。で、絶対別れるぞ!って決めたのに、奥様がふと寄りそうと「明日から一緒に頑張ろうな」みたいになっちゃう。これこそ夫婦よね。
3話目『よそ見して』は旦那に浮気された奥様の話。もうね、いろいろ恐ろしかった笑。これぞthe イタリア!みたいな感じ。「イタリア人夫婦は、男性は85%、女性の60%が浮気をしている」という衝撃的格言まで登場し、やっちゃいけないコトではあるけれど、「あんたなんてね!カビよ、カビ!カビカビカビ!」と言われた旦那になぜか同情すらしてしまうような作品。
4話目の主人公はこの作品の監督でもあり役者でもある大ベテラン、ジョバンニヴェロネージさん。『棄てられて』というタイトルで妻に捨てられた夫を描いた話。この監督の振り幅の広さ好きです。捨てられたら追っちゃいけないんです。そしてここでも「いかなる時でも威厳と誇りを忘れなく」という格言が出てきます。

とにかく、とにかく、4話とも全ての人物が愛しいです。アタシの愛するモニカベルッチが出ている続編もありますが、アタシはこちらのほうが俄然好き。日本人にとってイタリア人俳優はなかなか見慣れないかもしれませんが、全てのキャストがイタリアでは有名な人々です。庶民的であたたかい話に触れたかったら是非ご鑑賞を。オススメです
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