ベイビー

南極料理人のベイビーのレビュー・感想・評価

南極料理人(2009年製作の映画)
4.1
一年くらい前に沖田修一監督の「滝を見に行く」を観てとても面白い作品だと思い、それ以来、沖田監督の中で一番評価の高い今作のことがずっと気になっていました。

「滝を見に行く」は滝を見に行くバスツアーに参加したおば様たちが遭難してしまい、山の中で一泊野宿するという、かなりゆるいサバイバル映画。

そして今作は、ペンギンやアザラシ、ましてやウィルスまでも生息できない南極の極寒の地で、約一年間観測員として働く8人の男たちの物語。こちらも見方を変えれば、かなりゆるい漂流映画と言えるでしょうか。

孤立した地で、男8人の共同生活。そりゃ一年間閉鎖された場所で暮らせば色々鬱憤も溜まりますよ。

そこで心をリフレッシュさせるのに必要なのが、毎日の美味しい食事と毎朝ラジオ体操に出てくる女性たちのレオタード姿。毎日飽きない為に、色んなレオタード姿のパターンのビデオテープを何十本と持ち込んだらしい…

レオタードのパターンはともかく、四季がない南極において、食事は暦を楽しむ重要なアイテムです。食事に変化を加え、驚きを加え、喜びを与える。その食事を囲むのが食卓であり、一つの食卓を皆で囲めば、心もどんどん一つになっていきます。

"誰と食べるか"も大切ですが、"何をどう食べるか"ってことも、やはり同じくらい大切ですね。

その料理を担当するのが堺雅人さん演じる西村淳。調べたところ、この西村淳さんは実在されてて、実際に南極料理人として経験されたことを執筆したのが今作の元らしいです。今やタレントとしてもご活躍されているとのこと。

堺雅人さんのあの飄々とした存在はこのゆるーい作品に合っていて、生瀬勝久さんやきたろうさんの笑いが作品にアクセントを与えてくれます。他にも豊原功補さんや黒田大輔さんらもいいところで笑わせてくれます。

そして、こんなにゆるく穏やかな物語でも、しっかりと最後まで楽しませてくれる沖田修一監督の手腕もお見事でした。もっともっとこの監督の作品が観たくなります。
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