ぼのご

レネットとミラベル/四つの冒険のぼのごのレビュー・感想・評価

4.7
瑞々しくて微笑ましくて最高だった。
パリの都内っ子で垢抜けた学生のミラベルと、田舎暮らしでパリの美大に通う予定のある絵描きのレネット。ミラベルの自転車が田舎道でパンクしたことによって出会うふたり。

自転車を修理してあげるレネットの善良な笑顔に、ふとした悪意でとりかえしがつかないほど傷ついてしまうんじゃないかと不安になったけど、完全に杞憂だった。純粋過ぎるレネットを包み込むように、ミラベルが想像以上に優しい子でニヤけちゃう。

レネットの家に泊まるミラベル。田舎の夜と朝の境目に、夜の生き物も朝の生き物も寝静まって一分間だけ訪れる静寂をレネットは"青い時間"と呼んでいた。それを聴こうとするふたり。一日目は車の音で邪魔される。激昂するレネットにびっくりしたけど、宥めるミラベルが優しい。田舎についても興味が絶えなくて好奇心旺盛だった。

もう一日滞在することにして、翌日の外のテーブルでの食事中にパリで同居することも決まる。食事風景がまた素晴らしく爽やか! 衣装も小物も可愛いけど、ふたりがラディッシュみたいなのを齧っている場面だけでも絵になっていた。
そうして夜になりやってきた"青い時間"。神秘的に美しかった。ひとりで体感するのも気持ち良さそうだけど、一緒に共有できる人がいるのは素敵過ぎる! 幸先の良い一話だった。

二話目からパリに移る。レネットが意外とパリに馴染んでいて、自分を強く持って純粋さと善良さを保ちながら順応している様子が良い感じ。

道を聞いたら親切に教えてくれた男性二人。実はどちらも詳しくなくて、道をよく知らないくせに自分の案内が正しいと主張して言い合いになる。一生懸命に仕事している風だけど決めつけが激しくて自分の正しさを疑わないカフェ店員なんかも出てきたりと、三話四話でもそうだけど寓話めいた雰囲気を醸しながら都会の滑稽な人々が面白おかしく描かれていた。それが基本的にレネットの視点で描かれるから、おかしな雰囲気に飲み込まれずに済んでいてバランスが良い。一話ではレネットに個性的な印象を抱いたけど、都会の中では寧ろ彼女の方が圧倒的にまともに見えて不思議。

レネットは不器用なところも多いけど、物怖じせず行動力のあるミラベルが当然のように支えてくれる。でもミラベルもレネットの考え方に感化されたような行動をしたり、誰かを助けたい想いから万引き犯が捕まらないように万引き犯の荷物を奪って来たり変わっているところがあって、完璧じゃなくお互い対等で支え合っているところがものすごく素敵。四話で終わっちゃうけど、ふたりの日常をいつまでも観ていたくなる映画だった。
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