Ricola

淑女は何を忘れたかのRicolaのレビュー・感想・評価

淑女は何を忘れたか(1937年製作の映画)
3.7
倦怠期を迎えた中年の夫婦の話。
何でもかんでも指示通り動かす妻と、尻に敷かれっぱなしの大学教授の夫。
そこに大阪から姪がやって来る…。


ストーリーから小津監督自身の後期の作品「お茶漬けの味」と似ている。
が、尺の短さも影響したかこちらの方が少しライトに感じた。
それが別に悪いというわけではない。


奥さん同士の会話の中での夫の愚痴が笑える。
現代の世の中でもこういった場面は物珍しくは決してないだろう。

どうでもいいかもしれないが、彼女たちの会話の中で「バカね、カバ」という言い回しが多用されていたことに笑ってしまった。

ドン・キホーテのセリフの書かれた棚のようなものをじっくり映し、それが状況説明になっているというのがお洒落。
極端なことを言うと、サイレント映画のなごりのような表現方法ともとれる気がする。

意気揚々とした姪が夫婦の関係に荒波を立てるようでハラハラしたが、彼女の言動は「イマドキ」だったのだろう。
そして彼女のモガファッションが素敵!

ラストシーンがとっても粋で、かなりお気に入り。
日常のありがたさと美しさに心がほっと落ち着き、遠近感をうまく利用した演出に感動した。


テンポが良く、会話や視線の交わりにもセンスがあり楽しい映画だった。
Ricola

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