新潟の映画野郎らりほう

監督・ばんざい!の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

監督・ばんざい!(2007年製作の映画)
4.0
【アントニム】


既存映画文法をブチ壊す事なぞ簡単だ。だが ただブチ壊しただけの意図的失敗作を商業公開する事は禁忌であり、そこには失敗作である[必然と意味]を伴った(矛盾的表現だが)「完成度高い失敗作」でなければならない。
失敗作であり完成作?破綻しつつも完璧な構造?果たしてそんな事が可能なのだろうか?北野は「可能なのだ」と頷いてみせる。
それは映画内映画を撮る武の姿(=失敗作)を 本当の北野が撮る(=完成構造)のマトリョーシカ構造により成された。
それは一見失敗作だが 完成されており、映画讃歌だが 映画挽歌であり、そして馬鹿だが 実に真摯である。
荒唐無稽頓珍漢な見た目(クリシェ)の奥底には、完成作の体裁を表面上(クリシェ)だけ整えた安易企画・右倣えで実質伽藍堂な映画群への批判精神に満ちている。

「監督万歳!」-自らへの自戒も含め 映画製作者への奮起を問う言葉。これは峻烈な〈反語〉である。




《劇場観賞》