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侍のkoyamaxのレビュー・感想・評価

(1965年製作の映画)
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桜田門外の変、井伊直弼暗殺に加勢することになった浪人の数奇な運命を描く物語。

タイトルがストレートすぎるので、
「侍バンザイ」「チャンバラカッコイイ!」
みたいなのを期待するところもあるのですが、、

主人公はある意味で「侍」ではなく「侍になりたがっている男」で、
その「侍になること」に対してアイロニカルな視点で描かれており、
「侍バンザイ」どころか、「侍」って何なんだろうね?と、疑問を呈すような語り口があとあとまで、心に残り続けました。。



以下備忘録的に、、

いつになく、三船敏郎がくたびれている感じがあるのは、ともかく、、
伊藤雄之助は冷血な男を演じています。
いままでみてきた伊藤氏はもっと胡散臭い男だったので今作の「鋭く冷血」な男は、個人的に新鮮でした(^^;

雪の中の戦いを観たくて鑑賞したのですが、、
桜田門前の広大なセットが臨場感あります。
井伊直弼を待ち構える侍たちの緊迫感。
降雪スピードも速くやたら大粒な雪。それが妙にカッコいいんですね。
緊張で張り詰めた雪の桜田門の空気感と、臨場感あるのにファンタスティックな雰囲気。一瞬にかける侍たちの面持ち。

ここが、この映画のかっこよさのすべてです。

クライマックスのアクションも素晴らしいのですが、そこに至るまでの張り詰めた緊張感が白眉ですね。

全てはこの「桜田門外の変」を描くため。
このシーンに至るまで展開が冗長に感じるところがあるとか、ちょっと思うところあったとしても描かれるべきものが描かれていれば気になりません笑


岡本喜八映画の真骨頂というか、シャープなカット割りもさすがなのですが、、
いつも思うのはあまり残酷な感じにならずともなんかアクションが痛そうなんですよね。。チャンバラにしても。。
血の気が引くというか、終わると心がざわついた気持ちでいっぱいになります。
といいつつ、観ている時はテンション上がりまくって観ているのですが(^^;

テンションアゲアゲは鋭く技巧的なところに依り、描くべきものは、深すぎて黒い。。
シンプルに無邪気、シンプルにダークというものがないので、ある意味とっつきづらさをおぼえます。そこが凄みといっていいとおもうのですが。
こういったせめぎあいが岡本喜八らしいというところなんでしょうか。(わかりませんが)
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