タケオ

アメリカン・パイのタケオのレビュー・感想・評価

アメリカン・パイ(1999年製作の映画)
4.2
卒業を間近に控えた4人の男子高生がプロムまでに童貞を卒業しようと奮闘する姿を描き、全世界の'童貞たち'から熱い支持を集めたセックス•コメディの金字塔。本作の主人公たちは童貞を拗らせたどうしようもないバカたちのため、もちろん作中のギャグ•シーンの大半は眼を覆いたくなるような大惨事へと発展することになる。'ババァノックしろよ系ギャグ'から'早漏ネタ'まで、次々と繰り出される古今東西のあらゆる下ネタ•ギャグには存分に笑わせられたが、だからこそ本作は鑑賞者たちに「バカだったあの頃」を思い出させつつも「真に童貞を卒業するとはどういうことか?」という真摯なテーマに向き合わせてくれる。若い頃は「セックス=ステータス」だと勘違いしている救いようのないバカがよくいたものだが、本作はそんなクソ野郎どもに対して容赦なく言い放つ、「NO」であると。まるで、なかなか童貞を卒業できないものたちを代弁するかのようにだ。確かに、誰よりも早くセックスをできるのは嬉しいことだろう。多幸感とともに「お前ら冴えない童貞とは違うんだ」という圧倒的な優越感も味わうことができる。だが、単に<セックス>をすることと童貞を<卒業>することには大きな違いがある。ただのセックスとは、単に性的欲求と快楽を満たすためのもの。童貞を卒業するというのは、仲間とともにバカをしまくった青春時代を卒業し、嫌なことばかりの社会の中で人を愛することを知るための"イニシエーション"だ。通過したが最後、もうあの頃には戻れない。メンバー4人の中で唯一'愛のあるセックス'を経験したクリス(クリス•クライン)だけが、最終的に大人びた雰囲気を漂わせている。彼だけは、真の意味で童貞を卒業したのだ。ただのバカ映画のように思わせておきながらも、その根底には愛と友情に対する鋭い考察がある。だからこそ本作は、童貞(または、かつて童貞だったものたち)から熱い支持を集め続けているのだろう。
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