タケオ

ザ・クリエイター/創造者のタケオのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
2.1
-借り物ばかりの虚しい映画『ザ・クリエイター/創造者』(23年)-

 たいへん気合いの入った作品ではある。続編やリメイクばかりが金太郎飴のごとく量産されている昨今において、本作のような独立したオリジナルSF作品が成立したこと自体寿ぐべきことだ。製作費8000万ドルとはにわかに信じがたい堂々たる画作りにも目を見張るものがある。
 『GODZILLA ゴジラ』(14年)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16年)など近年フランチャイズ作品を多く手掛けてきたギャレス・エドワーズも久しぶりのオリジナル作品とあってか、「やりたかったことを全部やってやる!」といわんばかりに独自のクリエイティブマインドを存分に発揮している。全編に満ち溢れる'無邪気さ'は、本作の大きな魅力のひとつだ。しかし、エドワーズが独自のクリエイティブマインドを発揮しようとすればするほど、オリジナリティよりも既視感の方が先に立ってしまうのは如何にも勿体ない。エドワーズはやりたいことを全てやっている。それは間違いない。しかし、彼のやりたいことは『地獄の黙示録』(79年)と『ブレードランナー』(82年)、そして『アキラ AKIRA』(88年)なのだ。ゆえにビジュアル面は擦り倒されたイメージばかりの連続で、新鮮味がまるでない。「心に傷を負った男と秘密を抱えた少女のロード・ムービー」というプロットにも意外性がなく、全ての展開が想定の内に留まる。オリジナリティを欠いた世界観と凡庸なドラマはあまりにも退屈だ。似たような世界観であれば、ニール・ブロムカンプ作品のほうがよっぽど豊かな映画体験をもたらしてくれる。
 『モンスターズ/地球外生命体』(10年)でみせた「インディーズ魂」はどこへやら。ようやくフランチャイズ映画の軛から解き放たれたはずのエドワーズだが、再び自らの作家性を証明するせっかくのチャンスを不意にしてしまった。エドワーズにとってのオリジナリティは、全てが借り物の域に留まる。なんとも虚しい映画であった。
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