タケオ

イコライザー THE FINALのタケオのレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
3.7
-ついにマッコールは「神の代理人」と化した!『イコライザー THE FINAL』(23年)-

 元特殊工作員ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)の活躍を描いた人気アクション・シリーズの第3弾。とある事情でシチリアを訪れていたマッコールが、住民たちの暮らしを脅かすマフィアを相手に熾烈な戦い・・・もとい一方的な殺戮を繰り広げる姿をスタイリッシュに描く。
 シチリアが舞台ということもあり『ゴッドファーザー』シリーズ(72~90年)を思わせる画作りや音楽が散見されるが、おそらく本作が最も意識しているのは『ダーティハリー』(71年)や『荒野の用心棒』(64年)をはじめとしたクリント・イーストウッド主演の作品であろう。「流れ者が悪と対峙する」という映画の構造が西部劇そのものであることはいうまでもない。しかしそれ以上に本作をイーストウッド作品たらしめているのは、マッコールというキャラクターがハリー・キャラハンや「名前のない男」と同様、神に代わり裁きを下す「ペイルライダー」として演出されている点だ。1作目でもかつてマッコールが自らの死を偽装して仕事を引退したことが語られていたが、本作も銃弾を受けたマッコールが治療を受ける場面から始まることで、「死」と「再生」という宗教的なイメージが提示される。くわえて『ダーティハリー』がそうであるように、十字架や教会が頻出するのも印象的だ。本作においてマッコールはある種の「亡霊」であり、同時に「神的」な存在として演出されている。クライマックスで闇に紛れて敵を殲滅していく主人公の姿がほとんど映らないという演出は、『ペイルライダー』(85年)へのオマージュだろう。この場面でも、マッコールが超常的な存在であることが強調されている。
 キリスト教の教えでは、人は人を裁くことができない。人を裁くことができるのは神だけだからだ。ゆえに「死」と「再生」という宗教的なイメージを背負うマッコールは、マフィアが跋扈する神なきシチリアに降臨する必要があった。神の代理人として悪を裁くために。とはいえ、本質的には危険なヴィジランテのマッコールを「神の代理人」として描くのは少々危ういような気もしなくはない。その点に関しては、かなりモヤモヤした。まぁ、細かいことは気にせずジャンル映画として割り切れば実に痛快な作品ではあるのだが・・・。
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