せーじ

大阪物語のせーじのレビュー・感想・評価

大阪物語(1999年製作の映画)
4.1
163本目。
「トニー滝谷」で市川準監督を知り、レンタルすることを決めた作品。
1999年公開の作品だが、DVD化されたのは最近で、TSUTAYAでも「準新作」のコーナーにあり、探し当てるのに少々苦労をしてしまいました。

かわいい…
「ジョゼと虎と魚たち」でも思ったことなのだが、池脇千鶴さんの吸引力が凄まじい勢いで炸裂している。特に、ふとした瞬間に見せる表情がすごくいい。十代でこの感じが出せていたというのは、本当にどうかしていると思う。
また、田中裕子さん演じるオカンと沢田研二さん演じるオトンも、二人の職業はともかくとして、人間的な描写が濃厚になされていて、実在感がしっかりとある作品になっている。
そんな二人、とくにしょうもないオトンのルーツをヒロインが追いかけていくという中盤以降の展開も、全体的にコテコテで垢ぬけない感じがあって旧さを感じさせるものの、見応えがある話運びになっていると思う。そこだけちょっとドキュメンタリー風な撮り方をしているのも含めて、それが作品そのものの強度にも繋がっているように感じる。

吉本興業の芸人さんや関西出身の有名人が、亡くなられた人も含めて多数出演されているので、そういう意味でも面白く観ることができると思います。また、おそらくは今は変わってしまっているであろう、大阪の街並みの特にノスタルジックな部分が大きく取り上げられている作品だと思うので、もしかしたら今後、当時の大阪を収めたという意味でも貴重な作品になっていくのではないかとも思います。昔をリアルに感じさせる映像が観たいなら、観たい時代の現代劇を観るのが最適解になりうるといういい例になっているのではないでしょうか。
本作を観てから「ジョゼと虎と魚たち」を観て、「そこのみにて光輝く」や「きみはいい子」を観ると、池脇千鶴さんの演技の変遷が堪能できておすすめです。ぜひぜひ。
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