櫻

おくりびとの櫻のレビュー・感想・評価

おくりびと(2008年製作の映画)
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生と死はつながっているのだなと感じたのは、高校生のころに父が亡くなったときだったのだけれど、その感覚は歳を重ねるとともに、はっきりと強固なものになっていった。生きていると死が突然顔を出したり、死の先っぽに触れようとすると生がすっと目の前に現れたりする。それは季節が巡るのと同じくらい自然なことなのだと、父の死とともに気づいた。わたしたちは生のうちに生きているのではなく、生と死の隣り合う場所を生きているから。

生きていくことは、食べること。それを物語るように、納棺の儀の後には必ず、貪るような食事シーンが描かれていた。死を悼む傍らで、わたしたちはほかの生き物を殺し、それをありがたくいただく。嫌になるくらい本能的で、もう気が遠くなるくらい続いてきた業。

生きている存在すべて、最後は死んでしまうのに、なぜこんなに必死に誰かを愛するのだろう。わたしが誰かを恋しく想ったり、誰かが愛する人を想うのを感じるとき、満たされる気持ちよりも切なさや哀しさがつのるのは、同時に死を思っているからなのかもしれない。生きていても形として残るのはほんの僅かで、かなしいくらい真っ赤に燃えるばかりだから、自分のかけらを宿す命を残したいと、本能で願うのかもしれない。わたしの中にも、母やもういない父の赤い何かが流れているし、祖父や祖母、数えきれない自分では知ることのできない誰かのかけらが存在している。自分が子どもを産むかはわからない。けれども直接血を引いたものたちだけではなくても、今生きているわたしたちを線で紐解いたのなら、きっとずっと昔の誰かと繋がっているのだろう。わたしは、続いていく歴史の一部なのだとつよく思う。
櫻